ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

78高知論叢第111号場において日々生起する教育実践上の問題点について,各教師ないし学校単位の研究や取組みの成果が発表,討議の上,集約される一方で,その結果が,教育現場に還元される場ともなっているというのであって,教員らによる自主的研修としての側面をも有している」と評価し,これは「自主的で自律的な研修を奨励する教育公務員特例法19条,20条の趣旨にかなうもの」とするここでは団体の政治活動に関する点は省く。2については,過去に右翼団体の妨害があったことから「抽象的には街宣活動のおそれ」があることを認めつつ,本件の不許可処分の時点では具体的な妨害の動きがあったとは認められないこと,そして集会予定日が,休校日である土曜日と日曜日であったことなどから,学校教育への支障,特に生徒に対する影響は間接的なものにとどまると判断する。3については,教育研究集会は「多くの教科に関する教育用具及び備品が備わっている学校施設を利用することの必要性が高いことは明らかであり,学校施設を利用する場合と他の公共施設を利用する場合とで,本件集会の分科会活動にとっての利便性に大きな差違がある」として,分散開催となった本件集会・活動に支障があったことを認定している。以上から,判決は「本件中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き,児童生徒に教育上悪影響を与え,学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由で行われた本件不許可処分は,重視すべきでない考慮要素を重視するなど,考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており,他方,当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず,その結果,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。」と結論づけている。さて,以上の判決及びこれに対する学説での評価を,本稿の視点である判断の過程と帰結という視点から検討することで,我が国の問題状況を整理したい。まず,法規の規範構造と判断の過程と帰結の関係について触れる。最高裁は学校施設使用許可を裁量,いわゆる効果裁量として捉えている。裁量所在の条文上の根拠は特に学校教育法85条「学校教育上支障のない限り,学校の施設を社会教育その他公共のために,利用させることができる」という「できる規定」にある。効果裁量においては,要件充足の場合に限り,裁量が働くので,要件