ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

効果裁量,計画裁量,及び裁量瑕疵に関する基礎的考察(1)814 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4上の支障が特に認められない限り,施設使用を許可しなければならない」との法定立をした,となろう。たしかに,最高裁は教育委員会の許可運用実績に拘束力を認めず,衡量はその都度その都度のものであるとしているように読める。しかし,少なくとも,本件最判自身は個別紛争解決を超えて,教育研究のための集会と公物使用許可との一般的関係についてなんらかの「すべし規定」を法定立したとの見方はできる15 4 4 4。この法定立は判決が先例としてもたらす事後的拘束力の問題,いわゆ4 4 4 4 4 4 4 4る「判決の射程」の問題であるのか,あるいは裁判所自身が衡量の産物として4 4 4 4 4結論の前に,すなわち判決の正当化として法定立したのか,これを問うことは裁量審査の本質を理解する上で重要であろう。次に,本件最判の裁量審査が判断の過程の瑕疵を指摘したものか,それとも帰結についての何らかの瑕疵を指摘したものか,という点を検討したい。判例は本件処分の違法性判断の理由として特に教育研究集会及び学校教育への支障に関する評価の瑕疵を挙げている。これは学説で一般に過大評価・過少評価という判断過程の審査によって判明する瑕疵である,とされる。しかし,過大評価・過少評価の審査は本当に判断の過程を審査しているといえるのか,についてはなお議論の余地がある。というのは,後述するドイツの衡量統制の議論では過小過大評価の審査は評価瑕疵の審査になるが,これは判断の帰結に関する瑕疵であるとする見解があり,この点ではほとんど比例原則審査と区別され得ない。というのも,司法過程で,当該事案で問題となる法益(=考慮要素)が過不足なく出そろっており(考慮不尽審査),かつその法益に該当する当該事案での事実も確定され(事実誤認審査),あとは対抗法益間の評価の問題だけだとする。この場合,たとえば,一方の法益の過少評価という瑕疵は自動的に対抗価値とは比例的ではないとの帰結に関する瑕疵に結びつくといえる。一方4 4 4 4 4の価値が十分に評価されてはいないということは,その犠牲に見合うだけの対抗価値の優越が疑わしい,となるからである。本件での研究集会の評価の問題にせよ,あるいは神戸高専剣道実技拒否事件(最高裁平成8年3月8日民集5015黒原・前掲注(11)148頁。