ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

82高知論叢第111号巻3号469頁)における教育上の実技代替措置拒否の評価にせよ,評価の過大あるいは過小の議論をした時点で自動的に帰結の問題へと結びついている,と考えられるのではないであろうか。しかしそうすると,このような審査がどの程度覊束行為に対する司法審査と異なるのかが問われよう16。こうした瑕疵の対象となる過程と帰結の曖昧さは最高裁自身の定式からもうかがえる。従来,最高裁は効果裁量統制の対象を判断の帰結に求めてきたようにみえる。すなわち,帰結について「社会観念上著しく妥当」(最高裁昭和52年12月20日民集31巻7号1101頁)であるか,をみてきた。そして判断過程の統制は本件にもあるように,これに単純に取って代わったものではなく,文言上は追加されたに過ぎない。しかし,これでは結局,過程をみることはあまり意味がないのではないか,という疑問が生ずる。学説は,この点について,結果についての妥当性に関わらない限り,過程の瑕疵だけでは違法性を構成しないとまではいってはいない。これを認めれば,結局,判断過程の統制は意味がないことになるからであろう。しかしながら,あらゆる過程の瑕疵が違法性を構成するわけではなく,それは決定を左右する重要なものに限られるとしているようにみえる17。たしかに,我が国でも研究されてきた通り,ドイツの計画裁量の統制においては,4で触れるようにドイツ連邦建設法典214条3項やドイツ行政手続法75条1a項という立法的な特別措置があり,違法性が認定される過程の瑕疵を帰結に影響を与えるものに限定している。しかし,周知の通り,これには多くの批判や議論がある上,効果裁量の統制にまでこうした過程の瑕疵の制限法理を一般化するという議論にはなってはいないようにみえる。その理由は計画裁量が実践的な理由で特別であってもいわゆる計画受容の法原則18(Der Rechtsgrundsatz der Planerhaltung),原則裁量行為には一つの正しい決定はないという点が根底にあり,司法審査を過程へと向かわせているようにみえる。16この点は以前より指摘されてきた。山田・前掲注(7)698頁。17山本・前掲注(2)234頁。18Werner Hoppe, Der Rechtsgrundsatz der Planerhaltung als Struktur- undAbwagungsprinzip, DVBl 1996, 12ff.; Eberhard Schmidt-Asmann, in: Theodor Maunz,Gunter Durig, et al., Grundgesetz : Kommentar , Art. 19 IV(2003)Rdn. 216.