ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

効果裁量,計画裁量,及び裁量瑕疵に関する基礎的考察(1)83以上みてきた通り,本件事案をめぐっては,「できる規定」の捉え方の問題,衡量と包摂の問題,法定立の問題行政及び裁判所による,司法審査が向かう先の問題等が挙げられ,その各々が判断の過程と帰結の定義や区分の問題に密接に結びついている。とすれば,こうした定義や区分に関する検討は,裁量審査に関して,学説に一つの示唆を与え得ると考えられる。そこで以下では,ドイツの裁量審査についての議論及び計画裁量についての判例を分析的に検討することで,まずはこの問題の解決の手掛かりにしたい。3.効果裁量と裁量瑕疵行政判断における過程と帰結の区分,及びその瑕疵の問題は,計画裁量に関する議論であるので,効果裁量そのものを検討する必要性は一見ないように思われる。しかしながら,5以下でみる通り,この二つの概念定義や区分の正当性の問題は,効果裁量及びそれが前提とする規範構造を検討することから明確な議論へと導かれる。そこで,以下では,効果裁量とその司法統制についての概要からみていくことにする。効果裁量は狭義の意味での裁量19であり,それは法律が明白に認めた裁量,正式な意味での裁量と観念されている。この理解は法律による行政の原理を要件効果規定による行政の拘束と捉える考えが前提となる。行政の法律への拘束は,まずは,法規と現実が与えられれば,自動的に行政行為が導き出されることが理想になる。したがって,いわゆる法律による行政の原理からは1)法律要件と法律効果に含まれる法概念が明確であって,かつ2)要件効果が必然的に結びつく「すべし規定」(Mus-Vorschrift)が基本となる。この種類の法規に基づく行政行為がいわゆる覊束行為である。この場合,上の論理的必然性から,特定申請等,所与の事例においては,「唯一の正しい決定」が存在する,19Bachof前掲注(5)97ff.; Fritz Ossenbuhl, Rechtsquellen und Rechtsbindungen derVerwaltung in: Hans-Uwe Erichsen und Dirk Ehlers(Hrsg.); Allgemeines Verwaltungsrecht,14. Aufl., Berlin, 2010,§10 Rdn. 10.なお,効果裁量については他に以下の教科書を参考にした。Hans J. Wolff/ Otto Bachof, VerwaltungsrechtⅠ, 12. Aufl., Munchen, 2007;Hartmut Maurer, Allgemeines Verwaltungsrecht, 16. Aufl., Munchen, 2006.