ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

効果裁量,計画裁量,及び裁量瑕疵に関する基礎的考察(1)85複数の等価値の「帰結」が合法である以上,ある特定の行政決定=帰結を求める訴訟は原則許されない。特に,義務付け訴訟は原則許されないことになる。この場合,原告には正しい帰結を求める代わりに,瑕疵なしに裁量が行われることを求める権利が帰属する,いわゆる無瑕疵裁量行使請求権である23。ここでいう瑕疵(Fehler)とは違法(rechtswidrig)のことではあるが,覊束行為の違法が唯一の正しい決定=帰結との比較から導き出されるのに対して,裁量行為の違法は帰結ではなく,その過程に着目されることになる。これが裁量瑕疵論の特徴である。どのような場合に裁量瑕疵とみなされるのか,そしてそれゆえ,裁判所の違法認定を受けるのか,についてはドイツ行政手続法40条及びドイツ行政裁判所法114条の定めがある。ドイツ行政手続法40条は「行政庁は裁量権を行使する際,裁量の授権目的に従い行使し,かつ裁量の法律上の限界を遵守しなければならない。」とし,ドイツ行政裁判所法114条は「行政庁が裁量権を行使する場合,裁判所はこれについても,その行政行為あるいは行政行為の拒絶あるいは不作為が違法であるか否かを,以下の事由に基づいて審査する。裁量の法律上の限界が超えられているという事由,あるいは裁量が授権目的に対応する仕方で行使されていないという事由について審査する。」としている。どちらも裁量を自由裁量としてはいないことは明らかであり,とりわけ文言上は,裁量は「授権の目的」及び「法律の限界」による制約を受ける。しかしながら,これらの文言は抽象度が高く,曖昧であるため24,文理解釈は断念され,学説は裁量瑕疵論を独自に展開している。学説では,一般的に裁量瑕疵を「裁量不行使」(Ermessensausfall),「裁量踰越」(Ermessensuberschreitung),「裁量濫用」(Ermessensmisbrauch)の三分類にする傾向がある。このうち,まず,行政判断の時間的過程としては裁量不行使の問題が先行する。これは行政が意図的にあるいは錯誤で,ある行為あるいはある不作為を裁量行為でありながら,覊束行為と考えて,行政行為を行った,あるいは行わなかった場合に発生する。たとえば,教会の周辺住民から鐘23Ossenbuhl前掲注(19)§10 Rdn. 22.24Ossenbuhl前掲注(19)§10 Rdn. 15.