ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

86高知論叢第111号の騒音についての苦情が出され,その警察対応として,警察措置の権限がないとの判断から対応をとらなかった場合等が例として挙げられる25。裁量踰越とは「できる規定」の法的効果の部分でカバーされて(gedeckt 26)はいない決定を行政が選択した場合や法律要件が満たされていないのに効果が付与される場合に発生する。たとえば,ある行為に対する過料として法律が20から50ユーロで規定されているときに,行政が60ユーロの過料を課すケースが挙げられる27。「裁量濫用」については,学説により様々な内容が主張されている。まず,前記行政手続法と行政裁判所法に規定されている「授権の目的」に沿わないという点を捉え,正当な目的のようにみえて当該「できる規定」がカバーをしてはいない規範外目的から裁量を行使した場合が挙げられる。たとえば,警察法上の各種警察措置は危険防止が目的であるが,専らそれ以外の目的から,町の美観や福利厚生,財政上の理由など,当該「できる規定」が念頭においてはいない目的から行政行為が行われた場合が挙げられる。また,目的ではなく,行政機関が主観的な偏見や動機から行為した場合,たとえば,党派的な理由で集会に対して解散命令を出す場合なども裁量濫用に当たる,とされる28。人権規定や比例原則と裁量瑕疵との関係については,学説ではっきりとした説明はないようにみえる。これらを裁量瑕疵の三類型の説明から外して,一般原則による裁量の拘束として説明するもの29や,裁量濫用における目的違背の概念を拡張して裁量濫用の中に組む込むもの30などがある。最後に,これらの三種の裁量瑕疵の訴訟法上の効果については,各々の瑕疵は治癒されない限り即座に行政行為の違法性を構成するので,取消訴訟であれば,行政裁判所法114条及び113条に基づいて処分は常に取消される。そしてこの取消の司法判断においては,行政庁が異なる決定に至る可能性があるか否かは問題にならな25Maurer前掲注(19)§7 Rdn. 21.26Ossenbuhl前掲注(19)§10 Rdn. 17.27Maurer前掲注(19)§7 Rdn. 20; Hans J. Wolff/ Otto Bachof前掲注(19)§31 Rdn. 47.28Maurer前掲注(19)§7 Rdn. 22; Hans J. Wolff/ Otto Bachof前掲注(19)§31 Rdn.51-53.29Maurer前掲注(19)§7 Rdn. 23.30Hans J. Wolff/ Otto Bachof前掲注(19)§31 Rdn. 49.