ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

88高知論叢第111号はならず,過程の瑕疵が帰結に与える影響の有無についても,問題にはならない,とするのが一貫した考えになるであろう。最後に,第四として,人権規定等,特に,比例原則と裁量瑕疵の関係は極めて曖昧である。これも後述8で触れるが,学説が「法律」(Gesetz),「法」(Recht),「目的」(Zweck)について行政法総論における法源論及び裁量瑕疵論で一貫して検討してはいないことに起因していると考えられる。4.計画裁量と衡量瑕疵板ガラス判決にみる衡量過程と衡量帰結の区分論ドイツの都市計画及び計画裁量に関しては,我が国ですでに多くの研究がなされてきたので34,本稿がこれに新たに付け加えることはあまりない。本稿の目的は判断の過程と帰結についての分析的検討であるので,5以降の法学方法論上の議論のために,ここでは,そのための基礎的な作業を行うことにする。以下では,まず,ドイツ連邦建設法典(旧法である連邦建設法を含む。なお,以降,改正が多いこの旧法35については,単に「連邦建設法」とし,これで裁判当時の法を意味することにする)を中心に,計画裁量の考え方及びその瑕疵に関する考え方を基本的な判例及び学説に沿いながら整理し,その上でその問題点を指摘することにしたい。よく知られているように,ドイツにおいては土地利用・開発を含む建設計画は建設管理計画と呼ばれる計画によって遂行されるが,この法的規制としては,いくつかの法改正と長い議論の末,現在では連邦建設法典が主要法となっている。計画の主体はゲマインデである(連邦建設法典2条1項)が,これに現在ではEUの指針や連邦及びラントの大綱がある程度の影響を与えている。ゲマインデが策定する建設管理計画には二段階がある。まず準備的な計画である土34以下述べる通り,計画裁量という概念は,それ自体に争いがないわけではなく,そしてこれは一般に,以下で述べる建設法ばかりではなく,道路法,水法,航空法などの法領域でも問題になる概念ではある。なお,我が国の文献については前掲注(9)を参照。35旧法の改正の歴史については村上・前掲注(9)を参照。