ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

効果裁量,計画裁量,及び裁量瑕疵に関する基礎的考察(1)89地利用計画があり(同法典5条~7条),その後それに基づいて詳細な建設詳細計画が策定される(同法典8条~10条)。建設詳細計画には道路や緑地の位置などがかなり詳細に規定されており,それは条例の形で発布され,法的拘束力を有する。さて,計画裁量は上で挙げたゲマインデの計画策定権限を規定している連邦建設法典2条1項にその根拠を求めることができるようにみえるが,これは「できる規定」という明確な授権規範とは明らかに異なるので,3で示した伝統的な意味での裁量,効果裁量とは異なる根拠づけが必要になる。この点,判例は,計画はそれ自体の内在的な意味として形成的な行為を含むとして,幅広い形成の自由・裁量を認め,それゆえに司法審査においては制限的司法審査の規定である行政裁判所法114条の適用を認めている36。ただし,同法114条は,3でみた通り,あくまで効果裁量に対する裁量瑕疵であるので,これとは別枠で計画裁量に対する瑕疵,すなわち衡量瑕疵を判例法理として展開する必要性があった。この衡量瑕疵論の基礎にあるのが,計画裁量を拘束ないし指導する衡量原則(Abwagungsgebot)と呼ばれるもので,これは現在の連邦建設法典1条7項において以下の通り規定されている。「建設管理計画の策定においては,公益と私益を相互に適正に考慮しなければならない」と。ここでいう公益及び私益とは,同条1項の基本目的及び6項に挙げられている宗教,経済,青少年育成,交通,自然・景観などの保護法益であるから,衡量原則は計画策定者に対してこれら法益を正しく衡量することを求める,という内容になる。そして,この「正しい衡量」についての三つの要求(Anforderungen)判例の読み方により四つとする捉え方もある37が,本稿は最後の二つを一つにまとめる立場38を採用し,以降三つとして扱うが,衡量瑕疵論における三つのタイプの瑕疵を成立させる。そこで以下では,この衡量瑕疵の詳細及びそこで登場する衡量の過程と帰結の区分論についていくつかの判例をみていくことにするが,36BVerwGE 34, 301(304).37Werner Hoppe, Zur Struktur der Normen des Planungsrechts, DVBl 1974, S.641-647(644).また,山田・前掲注(7)700頁,高橋・前掲注(7)128頁も同様。38Schmidt-Asmann前掲注(18)Rdn. 213.また,後述の板ガラス判決。