ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

効果裁量,計画裁量,及び裁量瑕疵に関する基礎的考察(1)91的で,計画実現のための終局的目的とその過程で個々に考慮される諸目的がある。後者の意味での目的とは特に連邦建設法典1条6項に挙げられている複数の法益のことであるが,これは相互目的間でも,それを実現する手段の間でも衝突する(Ziel-und Mittelkonflikt)運命にあり,終局的目的のために調整される必要がある。この作業は,要件効果規定が行為規範として行政に命じる要件該当性の判断というものとは根本的に異なり,広範な選択肢があることを前提に,将来の予測を含む,複雑な利害調整作業である,とされる43。こうした法規の規範構造二元論は,以下みる判例では直接言及されてはいないが,連邦建設法についての裁判所の考え方,この規範は行政にとってどのような行為規範で,行政の判断の過程と帰結にどのように関わるのか,そして裁判所にとってはどのような裁判規範であるのか,に関する裁判所の考え方との間にある程度共通のものを見出すことができるだろう。以下では判例をみていくことにする。連邦行政裁判所の判例において,計画裁量とその司法統制について明確な姿勢を示したのは1969年12月12日判決44であるといわれるが,これを継承して計画の具体的違法性認定を行った著名な判決として板ガラス判決45がある。この判決においては,上で述べた衡量原則の具体的適用とそのためのベースとなる衡量の過程と帰結の区分論46が展開されている。そして,この区分はその後の連邦建設法の法改正及び現行連邦建設法典214条3項において採用され,今日でも重要な意義をもち続けてきている。そこで,以下では,板ガラス判決を中心に据え,その補足として関連するいくつかの判例に触れながら,衡量瑕疵論及び過程と帰結の区分論を概観し,その後,この法理で明確になってはいない点や問題点を挙げていくことにする。板ガラス判決での事案はガラス工場建設予定地の近くに住んでいた原告が工場に与えられた建設許可及びその前提となる用途地域指定を含む建設管理計画の有効性について争ったものである。原告が住んでいる住居地域は既に三方が43Hoppe前掲注(37)643f.44BVerwGE 34, 301.45BVerwGE 45, 309.46これは板ガラス判決(1974年)前年の1973年判決(BVerwGE 41, 67)でも展開されているが,本稿では板ガラス判決をまず扱い,その補足として1973年判決を扱う。