ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

効果裁量,計画裁量,及び裁量瑕疵に関する基礎的考察(1)93に,第三原則は衡量において利害の意義や重さを正当に評価し,利害関係の客観的重さが比例的関係から逸脱しないことを命じるもので,これに違反した場合には,衡量評価瑕疵(Abwagungsfehleinschatzung)及び衡量不比例(Abwagungsdisproportionalitat)が生ずる。重要なことは,第一原則は計画の過程に対してのみ要求するものであるが,残りの二つは過程と帰結の双方に対して要求する(zweifache Zielrichtung der einzelnen Anforderungen desAbwagungsgebotes)ものである,とされている点である50。なお,第二原則がかかわる衡量過程について,判決は,詳細な分析を行っている51。第三原則が衡量材料(Abwagungsmaterial)の評価の段階にかかわるのに対して,第二原則はその前提である衡量材料の収集の段階にかかわる。それはさらに連邦建設法が定める法益概念の解釈の段階と当該事例でそれに該当する事実の収集と概念該当性の確認の段階に分けられるが,いずれの段階でもここには全面的な司法審査が働くとしている。なお,この板ガラス判決の過程段階論について若干付言すると,実際の計画策定においては衡量材料の収集の段階と評価の段階とで区分できるのか,という問題が指摘され得る。しかし,これについて,その後の判例の中には,計画策定段階で小規模営業について最初から無視されたことを第二原則違反と認定したものがある52。どんなに小規模な営業でも,まずは,衡量材料の収集の段階には入れられなければならず,評価段階での軽視ではなく,最初から無視されれば,その段階で衡量欠落が発生するとするものである。この点で,現代においてもこの区分論は一応妥当していると評価できよう。さて,板ガラス判決はこのように,衡量原則を述べた上で,当該計画には少なくとも帰結に関して瑕疵があるとする。当該計画の内容すなわち帰結とは,上の事例紹介で挙げた通り,原告が住む住居地域はすでにほとんどが工業地域に接しており,残った南側だけが保養地域にアクセスするルートになっていたが,その南側をも工業地域に指定してしまうと,当該住居地域は完全に工業地域に囲まれてしまう,という帰結である。判決は控訴審を支持して,こうした50BVerwGE 45, 309(315).51BVerwGE 45, 309(322f.).52BVerwGE, NVwZ 1989, 245.