ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

94高知論叢第111号計画は比例的な衡量の帰結ではない,としている。ここで直接衡量材料の根拠とされたのは連邦建設法1条1項にある「都市計画上の発展の秩序」であるが,これが含意する諸利益を正当に評価した帰結にはなっていないので,第三原則に違反する瑕疵があると認定された53。こうした板ガラス判決における衡量過程と衡量帰結の分離を衡量法益の違いという点で強調した判例がある54。事案は原告がその所有地に家を建てようとしたところ,不許可にされたことを争ったものであるが,当該土地は連邦建設法施行前の古い計画に基づいて建築禁止部分に指定されていた,という事情があった。ここで問題になったのは連邦建設法(1970年当時)173条3項1号である。それは,経過規定として,法律施行前の既存の実施計画については,有効なものとして受容する規定であったので,古い計画の違法性認定の基準時が特殊な問題として浮上する。ここでまず連邦行政裁判所は,衡量原則そのものは連邦建設法という個別法に依存しない一般的な法治国家原理からくるものである55としたうえで,衡量される法益については当時妥当する実定法に依存するとする。したがって,少なくとも衡量過程の瑕疵を認定する場合の基準は当該計画が策定されたときの法(この事例ではプロイセン建築線法)であるが,しかしながら,衡量帰結の瑕疵については異なる,との論理を採用した。すなわち,経過規定の趣旨から,連邦建設法が受容するのはそれに値する(Uberleitungsfahigkeit)計画である必要があるため,衡量帰結の瑕疵に関する衡量法益は新法である連邦建設法の法益であるとしたのである。そしてこの基準に従えば,旧計画は帰結の瑕疵が発生している,と判断した56。さて,ここで重要なのは,判決が衡量過程の瑕疵と衡量帰結の瑕疵について,当該経過規定に関する事案を超えて,一般的に以下のように言及した点である。判決によれば,衡量される利益については,過程と帰結で重ならないのは当然であり,帰結の段階で初めて衡量される利益がある,とする57。これは,ガラス板判決53BVerwGE 45, 309(322, 325).54BVerwGE 41, 67.55BVerwGE 41, 67(68).56BVerwGE 41, 67(71f.).57BVerwGE 41, 67(71).