ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

効果裁量,計画裁量,及び裁量瑕疵に関する基礎的考察(1)95における連邦建設法1条1項にある計画策定における基本目的は,帰結の瑕疵のみに関わるという点と重なるといえるだろう。最後に,よく知られているように,板ガラス判決後の法改正,連邦建設法115b条2項2文(現行連邦建設法典214条3項)により,衡量過程は計画の有効性に関わる重要な過程と重要でない過程に分離されるに至っている。これにより,帰結についてはそのまま,衡量第二,及び第三原則が適用されるが,過程については衡量原則の適用を受けるものが「明白で」かつ「帰結に影響がある」ものに限定される。明白性について,判例58は過程を中側(inneren Seite)と外側(auseren Seite)に分けて論じている。過程の中側とは計画策定に参加した者の動機や個々人の考えを指す。ここでの瑕疵は客観的な資料からは調査しにくい事柄であるので,法的にはあまり意味はないことになる。これに対して,過程の外側とは,客観的に把握が容易な衡量過程のことである。ここには,個々人の主観的な内面は含まれず,計画策定に関わる文書に現れるもの,衡量資料収集及び評価の記録が含まれる。さらに追加された「帰結に影響がある」という要件については,瑕疵がなければ違う計画内容になっていたであろう,という具体的な可能性が求められている59。以上,衡量原則に関わる判例法理をみてきたが,過程と帰結という概念からこれを再度総括すると三点にまとめることができるだろう。まず第一に,判例が衡量を過程と帰結に分ける理由は,もちろんこの区分が改正法で採用されてからは法解釈として重要になるのは当たり前のことだが,衡量三原則の適用を考える上で必要だと判断したからである。第一原則,すなわち衡量不行使の審査は過程にのみ関わるし,第三原則,すなわち衡量評価瑕疵及び衡量不比例の4 4 4 4 4審査は少なくとも帰結を対象にしている。第二に,さらに衡量法益についても過程と帰結では異なる。第三に,法改正後は,司法審査は過程に対しては選別的ではあるが,帰結に対しては100%審査対象とされている。さて,衡量原則に関する判例法理一般については学説で様々な議論がある。たとえば,第二原則が前提とする不確定法概念の解釈の問題や第二原則と第三58BVerwGE 64, 33.この判例については,山田・前掲注(7)を参照。59BVerwGE 64, 33(38-40).