ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

効果裁量,計画裁量,及び裁量瑕疵に関する基礎的考察(1)97ない。三点目として,過程の審査とは,基本的に「主観的」経過の瑕疵を問うものであり,帰結の審査はむしろ「客観的」な事態の瑕疵を問うというのが板ガラス判決の趣旨にみえる。しかし,法改正後の判決で触れた通り,その後判例は,文書から明らかにされない動機などは審査対象となる過程から排除することで過程の方にも「客観的な」要素が求められている。実際,学説には過程を計画の正当化の理由づけとして捉えるものもある62。ここでは過程は決して主観的なものではなく,客観的な理由づけを意味する。しかしそうすると,過程と帰結の間で何が異なるのかははっきりしなくなるのではないであろか。四点目として,板ガラス判決では三つの衡量原則は,第一原則を除いて過程と帰結の双方に妥当するとされる。そうすると,一つの計画について,その過程に三つのテストが,その帰結に二つテストが,計五つの種類のテストが成立するということになるが,はたしてこれは妥当であるといえるのであろうか。そして,判決はこうした衡量原則の一般的な説明をしてはいるが,その一方で,当該事案での計画無効の主要論拠としては,帰結について第三原則を適用することで瑕疵の認定をしていることは間違いない。学説も第三原則は帰結にのみに関わると考えるものがある63。とすれば,過程の審査においては,板ガラス判決にも関わらず,第三原則は適用されないと考えるべきなのであろうか。一方で,我が国の学説の中には,上で挙げたいくつかの判決を念頭に,過程の審査が内容の審査を含まざるを得ない点を指摘し,これが我が国における過程の統制審査に関わる大きな問題であると指摘するものがある64。これら,板ガラス判決,ドイツの学説,我が国の学説の三者を比べる時,三つの衡量原則のうち,どの原則が過程にあるいは帰結に適用され,どのような程度で判断の内容に関わるか,という点について必ずしも明確にはなってはいない,と考える。五点目として,板ガラス判決では衡量の抽象論が展開されている一方で,その終局的法発見とでも呼ぶことができる,素朴な結論としては,当該住居地域62Schmidt-Asmann前掲注(18)Rdn. 214.63Schmidt-Asmann前掲注(18)Rdn. 215.64とりわけ,山田・前掲注(7),高橋・前掲注(7)。