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概要

112

12高知論叢第112号ろが大きかった。関東軍は満洲全土を占領し,軍事的にはまれに見る成功を収めた。この後の軍事費増大によってインフレが進み,日本の資本による大陸進出がさらに増加した。満洲国の建国により中国市場に関心を持つアメリカら他の列強との対立も深刻化した。2.26事件後において日本の株価は暴落したが,短期に回復し,1936年をピークとして実質経済成長は20パーセントを突破した。以後,事件後に台頭した統制派が陸軍主流となり,軍事関連産業中心に統制経済が進んだ。1937年以降において市場経済は変調し,戦時インフレ下で実質GNPは低迷した。その結果軍事関連以外の産業は低迷した。本稿が対象とする1935年は戦時経済体制に入る前の日本経済が比較的安定期である。『会社四季報』第一回が刊行されたのは1936年であり,同書には上場企業の1935年の財務内容が記載されている。同資料によって,企業創業年別とF.F,N.F別企業数を図表3?2に示した。297社の中で非F.Fは77社,F.Fは220社であり,財閥関連のF.Fは120社である。図表3?3は1935年の上場企業の業種別内訳である。55社が繊維関係であり,全上場企業の約20パーセントを占める。ほとんどが旧満州から原料供給を受けている。電力,鉄道など資本が大きい企業の上場数が多い。図表3?4に示した企業は1935年時において海外に本社,主力工場がある上場企業一覧であり,47社に及び,上場企業数の約16パーセントである。日本市場はすでに東アジア,東南アジア経済圏と一帯となっていた。今日と比較して株主構成の大きな違いは個人株主の割合が高いことである。第二次大戦前における上場企業の大株主の多くは個人株主であった。図表3?5に示すように1935年におけるF.Fのトップ10人中の大株主中の個人大株主は図表3-2創業年別とF.F, N.F別企業数20世紀創業1935年『会社四季報』,各企業資料による