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概要

112

25論説国際会計基準審議会における公正価値測定の拡大の論理山内高太郎はじめに国際会計基準審議会(以下,IASB)の会計基準の中で公正価値という用語が多く見受けられるようになったのは,2000年頃からである。公正価値による測定は,オフバランスとなっていた金融資産や金融派生商品をオンバランスするために用いられただけでなく,将来予測を会計数値に含めることを可能とした。公正価値測定は,IASBの概念フレームワークに示される財務報告の目的,つまり,投資者,債権者の意思決定に有用な財務情報を提供することを基礎とした会計(とくに資産・負債アプローチ)と組み合わされ,認識領域の拡大をもたらしてきた。その一方で,公正価値測定における恣意的な見積りや算定される数の不確実性に対する懸念も拡大することとなった。公正価値測定は,将来予測情報をとりこむために多様な見積りが用いられ,個別の会計基準が対象とする事象の相違から異なる適用がなされた。認識領域の拡大により個別の会計基準の適用範囲に重複が生じ,各基準の論理的な整合性が必要とされるようになった。こうした状況にたいして,IASBは2003年に公正価値プロジェクトを開始し,2011年に国際財務報告基準(以下,IFRS)第13号「公正価値測定」を公表した。IFRS第13号において公正価値測定は,実体固有の見積りではなく市場の観点による測定であることが強調され,開示の拡充によって情報利用者の理解可能性を高め,基準間の整合性をはかろうとするものであった。高知論叢(社会科学)第112号2016年3月