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概要

112

26高知論叢第112号また,IASBは公正価値プロジェクトと同時期に概念フレームワークの改訂プロジェクトをすすめ,概念レベルにおいて不確実性をともなう将来予測情報をとりこむための論理を展開し,合意形成をはかろうとしている。本稿は,IFRS第13号と概念フレームワーク改訂プロジェクトにおける公正価値測定について検討し,IASBにおける公正価値測定の拡大の論理を考察するものである。1.IFRS第13号「公正価値測定」IASBは,2011年5月にIFRS第13号「公正価値測定」を公表した。IFRS第13号は,これまで統一的なフレームワークなしに開発されてきた個別の会計基準における公正価値測定や公正価値に関する開示が整合的でないという状況を改善し,財務諸表の比較可能性を高めるという目的から公表されたものである。また,IFRS第13号はアメリカ財務会計基準審議会(以下,FASB)が公表した財務会計基準ステイトメント(以下,SFAS)第157号「公正価値測定」の特定の部分を修正したものとなっている1。IFRS第13号は,公正価値測定を実体固有の測定によってではなく市場参加者の観点から測定を行うとしたことに特徴があり,市場参加者が用いる評価方法やインプットによって測定を行うことで,将来予測にともなう不確実性を含んだ数値を情報利用者の意思決定に有用なものとすることを意図している。さらに,公正価値を測定日における出口価格(exit price)とすることで,市場参加者の観点との整合性を高めている。また,IFRS第13号における公正価値測定は,金融資産に限定して適用されるものではなく,非金融資産や負債の測定に用いることが想定されている。非金融資産や負債の測定においても,IFRS第13号は市場の有無にかかわらず市場参加者の観点から測定することを求めている。? IFRS第13号における公正価値の定義IFRS第13号において,公正価値は「測定日に,市場参加者間の秩序ある取