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概要

112

28高知論叢第112号観察可能な市場取引または市場情報を用いる,または評価技法を用いて見積る場合に参照する市場によってインプットされる数値が異なるため,取引市場について規定されている。2009年に公表された公開草案では,資産の売却によって受け取る金額を最大化し,負債を移転するために支払う金額を最小化するのは最も有利な市場であると考えられたが,最も有利な市場を判別することが困難であるという公開草案に対する意見や主要な市場と最も有利な市場は多くの場合同じであるというIASBとFASBの考えから,IFRS第13号では,実際の取引市場に関わらず,主要な市場において取引が行われたと仮定して公正価値を測定することとし,主要な市場がない場合には最も有利な市場で取引が行われたと仮定することとした7。また,実体は公正価値を測定するために,市場参加者が自らの経済的利益を最大化(economic best interest)する行動をとると仮定して,市場参加者がある資産または負債の価格付けに用いるであろう仮定を用いることが求められている8。ここでの市場参加者は,互いに独立しており(実体の関連当事者ではない),その資産または負債について知識を有しており,その資産または負債の取引を行う能力と意思がある者とされている9。こうした前提で用いられる価格の取引コストは調整してはならず,輸送コストについては調整することとされている10。?非金融資産の公正価値測定IFRS第13号では,非金融資産の公正価値測定は,最有効使用(highest andbest use)という考え方を用いて行われる。最有効使用とは,物理的に可能な使用,法的に許容される使用,財政的に実現可能な使用という点を考慮し,最有効使用によってまたは最有効使用するであろう他の市場参加者へ売却することにより,市場参加者が経済的便益を生み出す能力を考慮に入れるというものである11。また,最有効使用は,実体が異なる使用を意図していたとしても市場参加者の観点から行われる。ただし,実体と異なる使用により資産の価値を最大化する場合を除いて実体の現在の使用が最有効使用である考えられるとしている12。