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概要

112

国際会計基準審議会における公正価値測定の拡大の論理35合意形成をはかるために修正が必要とされた。とくに,IASBとFASBの公正価値の考え方33や各基準で定めている公正価値測定の基礎に違いがみられた34。IASBとFASBは,2009年10月以降,共同プロジェクトとして公正価値測定の検討を行うことで両基準を収斂させるための合意形成をはかり,最終的にいくつかの相違35はあるものの基本的にFASBの考え方である出口価格をIASBが採用し,一部のIASBの会計基準をIFRS第13号の適用範囲外とすることで単一の公正価値測定基準を作り上げた36。IASBは,公正価値測定プロジェクトを開始するにあたり2006年に公表したディスカッション・ペーパー「公正価値測定」において「IASBは,公正価値測定プロジェクトは財務報告における公正価値の使用を拡大することを意味していないことを強調する37」と述べており,2009年に公表した公開草案「公正価値測定」では,「これらの提案は,他のIFRSが公正価値測定や開示を要求または認めている場合に適用される38」というようにややトーンダウンしたものの公正価値測定の適用について慎重な姿勢を示している。この公開草案の文言は,IFRS第13号に引き継がれている39ことからIASBの公正価値測定に対する姿勢は変わっていないと考えられる。また,IFRS第13号は公正価値測定や開示をどのように行うかを規定するものであり,いつ行うかを規定するものではないとしている40。つまり,IFRS第13号の役割は,複雑化した現行の国際会計基準における公正価値測定の整合性をはかるものであり,現行の国際会計基準で規定されている認識領域を拡大するものではないというIASBの主張である。しかし,この整合性をはかるためにFASBの基準とそこで示された公正価値の定義(出口価格)を用いたことは,IASBと異なる合意形成のもとで作成された測定基準を用いることを意味している。また,公正価値を出口価格と定義したことは,市場参加者の観点の導入や概念フレームワークとの合致といった論理的な説明が成り立つものの,金融危機の影響から公正価値測定について見直しが行われたにも関わらず金融危機以前に公表されたFASBの基準と同じ内容となったということであり,公正価値測定を制限するものではないことを意味している。出口価格を用いることを資産の取得で考えてみると,これま