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概要

112

36高知論叢第112号での取得原価に基づく会計では売り手と買い手の間で成立した取引価格によって買い手側では資産を記録してきたのに対し,公正価値(出口価格)に基づく会計では,買い手側は購入した資産を売却市場における市場価格で記録することとなる。この結果,公正価値(出口価格)に基づく会計では,購入市場と売却市場の価格が異なる場合が想定される。IFRS第13号では,当初認識時に入口価格と出口価格は多くの場合において等しくなると考えられているが,取引価格と公正価値が異なる場合は,個別の会計基準で定めがない場合は,そこから生じる利得または損失を純損益で認識しなければならないとしている41。このように,公正価値は,これまでの取得原価に基づく会計において重視された取引価格とは異なるものであり,当初認識時における測定,それ以降の事後における測定のいずれにおいても取引価格とは異なる数をもって会計事象を描き出すこととなる。2.概念フレームワークにおける公正価値測定?概念フレームワークプロジェクトの展開IASBの概念フレームワークである「財務諸表の作成および表示のためのフレームワーク」は,1989年7月にIASBの前身である国際会計基準委員会(以下,IASC)により公表された。IASCは,当時,証券監督者国際機構の支持を得るために比較可能性プロジェクト42に着手していた。比較可能性プロジェクトは,財務諸表の比較可能性を高めるために,それまでIASCが認めてきた多様な会計基準を減らすことを目的としていた。この過程において概念フレームワークは,新たな会計基準の作成における理論的な拠り所を提供するものとして位置づけられた43。つまり,概念フレームワークは,ある会計基準が認められる一方である基準が認められないという論拠を示す役割をはたすものとして作成されたのである。また,このことは,概念フレームワークに準拠して会計基準を作成するという現在のIASBの会計基準の開発体制をつくりあげたということができる。2000年にIASCは組織改革を行いIASBとなった。IASBは,将来において