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概要

112

38高知論叢第112号開示,報告企業について検討され,これまでの概念フレームワークにはなかった測定の節が新たにもうけられている48。1 2013年ディスカッション・ペーパーにおける公正価値測定IASBは概念フレームワーク改訂プロジェクトを再開にするにあたり,2013年7月ディスカッション・ペーパー「財務報告に関する概念フレームワークの見直し」(以下,2013年DP)を公表した。2013年DPでは,資産,負債の定義を次のように変更することが提案されている49。資産:過去の事象の結果として実体によって支配される資源であり,将来の経済的便益が実体に流入する(flow to)と予想される資源。負債:過去の事象に起因する実体の現在の義務であり,その決済が経済的便益を具現化する(embodying)資源を実体から流出させることが予想されるもの。ここで述べられている資産とは資源であり,負債とは現在の義務である,このことは予想される将来キャッシュ・フローの流出入から経済的資源50に視点を移すことで,これまでの概念フレームワークで問題とされてきた蓋然性の問題を解決するとともに,かつての定義では資産,負債とすることが困難であったものも資産,負債として認識可能とすることを意図している51。こうした資産,負債の定義の変更は,2010年の概念フレームワークの一部改訂における信頼性から誠実な表示への転換とともに認識領域を広げ,新たに広がった認識領域における測定において公正価値を用いる重要な理論的な支えとなっているといえる。IASBの1989年に公表された概念フレームワークでは,測定の基礎として歴史的原価(historical cost),現在原価(current cost),実現可能価値(realisablevalue),現在価値(present value)をあげ,一般的に用いられるのは歴史的原価(取得原価)であるとしていた52。これにたいし2013年DPでは新たに測定の節を設けて,測定を「原価を基礎とした測定(cost-based measurements)」,「公正価値を含む現在市場価格」,「他のキャッシュ・フローを基礎とした測定(other cash-flow-based measurements)」という3つに区分し,それぞれの特