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概要

112

40高知論叢第112号このように2013年DPでは,取得原価による測定と公正価値による測定を同等に位置づけ,この2つを用いることによって目的適合的な情報提供とならない場合には,キャッシュ・フローを基礎とした測定,つまり発生確率を加重平均した数値や実体固有のキャッシュ・フロー見積りを用いることを提案している。また,実体の観点(entity perspective)を用いるか,市場の観点(market perspective)を用いるかは,目的適合性の観点から判断すべきであるとされている59。2 2015年公開草案における公正価値測定IASBは,2015年5月に公開草案「財務報告についての概念フレームワーク」(以下2015年ED)を公表した。2015年EDでは,2013年DPの資産,負債の定義の変更と,経済的資源の定義を追加している60。資産とは,実体が過去の事象の結果として支配される現在の経済的資源である。経済的資源とは,経済的便益をつくりだす(produce)ための潜在性(potential)を有する権利である。負債とは,過去の事象の結果として経済的資源を移転する実体の現在の義務である。ここでの変更は,予想されるフローの考え方を削除するとともに,経済的資源を「能力がある」から「潜在性を有する」とした点にある。ここで示される潜在性について,2015年EDでは,「経済的便益をつくりだすための潜在性を有する経済的資源に関して,資源が経済的便益を生み出すことが確実である必要はなく,可能性が高いことさえ必要ない61」というように蓋然性を問題としていない。この変更は2013年DPの考え方を踏襲するものであり,蓋然性の問題の解決をはかるとともに資産,負債の認識領域の拡大をするものとなっている62。また,2015年EDでは,測定の基礎が2013年DPの3区分から歴史的原価63と現在価値64の2区分に変更されている65。このうち現在価値は,市場の観点を用いる公正価値と実体固有の観点を用いる資産の使用価値および負債の履行価値にわけられるとしている66。この区分には優劣はなく,いずれの測定の基礎にも利点と欠点があり目的適合的な情報を提供するために適した複数の測定の基礎を用いるべきであるという2013年DPの考え方から変更はない。