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概要

112

42高知論叢第112号準において公正価値という用語が2000年以降多用されるようになる。認識領域の拡大の必要性と目的適合性を理由として公正価値測定の適用が増加するとともに,その算定方法も市場価格から見積りを含むものへとfairという用語によって合意形成がはかれてきた。この結果,基準間において公正価値測定の整合性が失われ,認識領域が拡大したことで個別の基準の適用範囲に重複が生じるなど,実務における複雑性が増していった。こうした状況にたいして,2003年,IASBは公正価値の内容を明らかにしIFRSにおける適用へのガイダンスを提供するための公正価値プロジェクトを開始した。IASBの公正価値プロジェクトに大きな影響を与えたのは,アメリカの会計であった。2006年にFASBが公正価値測定に関する会計基準であるSFAS第157号を公表したことにより,IASBもSFAS第157号をもとにディスカッション・ペーパーを公表し,アメリカの公正価値測定の考え方を取り入れ,基準化することで公正価値測定の適用を拡大しようとした。しかし,2008年の金融危機において公正価値測定が問題とされたことで,公正価値測定の非金融資産への適用や金融商品会計における全面的な公正価値測定を見直す必要性が生じた。こうした過程をへて,IASBの公正価値測定の基準として2011年に公表されたのがIFRS第13号であった。IFRS第13号は,アメリカの会計基準との単一性を重視し,SFAS第157号とほぼ同じ内容のものとなった。IFRS第13号は,公正価値を実体固有の見積りではなく,市場価格や市場において用いられるインプットによる見積りといったように市場の観点から測定を行うことを明確にすることでその測定が財務情報作成者の恣意的なものではなく,市場を通して評価可能なものであると位置づけた。ここにおけるIASBの論理は,市場を基礎とした数値は公正価値であり,市場で用いられている見積りも公正価値たり得るというものであった。IFRS第13号は,公正価値測定の論理的説明と適用におけるガイダンスを示すことで公正価値測定とはどのようなものであるか,どのように用いられるものかといった事柄についての合意形成をはかるとともに,将来予測情報を会計数値に含めることの有用性70を示すことに意味があったといえる。さらにIASBは,公正価値測定をより広く用いるためにその論理の展開を概