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概要

112

国際会計基準審議会における公正価値測定の拡大の論理43念レベルに広げている。概念フレームワーク改訂プロジェクトで示される新たなIASBの会計の枠組みは,現行の概念フレームワークでは認識できない事象を認識可能なものするためにこれまで認識できなかった事象の測定に歴史的原価と現在価値(公正価値)を併用するというものである。しかし,ここで用いられる論理は併用することに重点があるのではなく,これまで歴史的原価と対比されて用いられてきた現在価値(公正価値)を歴史的原価と同等なものとして合理化することに意味があり,資産,負債の定義から蓋然性を削除することで公正価値測定の適用の可能性を広げるものとなっている。また,概念フレームワーク改訂プロジェクトでは,公正価値測定の適用を拡大するために,目的適合性に重点をおいて論理が展開されている。これまで,公正価値測定は信頼性が問題とされ,とくにレベル3における見積りが問題とされてきた。概念フレームワークの一部改訂により信頼性が誠実な表示におきかえられたことにより,目的適合性と信頼性のトレードオフ関係が失われ,測定の信頼性がないことを根拠として認識できなかった事象を認識可能(場合によっては認識する必要がある)としたのである。こうした概念の転換は,認識領域が拡大にともない測定の必要性が生じることから,その測定には公正価値や見積りを用いる必要があるという論理が展開につながると考えられる。こうした論理展開を支えるのが,IFRS第13号で示されたすべてのインプットレベルにおいて市場の観点をとりいれるとしたことである。実体の見積りから市場の観点による見積りに視点を移したことで,財務情報作成者の表明はあたかも完全な市場によって裏付けられているかのように説明され,その数値が正確であるかどうかという点から市場における理解や評価可能であるかという点に転換をはかろうとしている。このようにIASBにおける公正価値測定の拡大の論理は,基準と概念という2つの論理を結びつけることで,認識と密接に関わるものとなっているのである。1IASB, International Financial Reporting Standard(IFRS)13, Fair ValueMeasurement, May 2011, pars. IN5-IN7 and BC3.2Ibid., par. 9.