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概要

112

高知県企業における多様な人材活用のための労働時間管理57め,個別の従業員がかかえる介護等の問題がなお潜在化する可能性がある。制度が実際に運用されるか否かについては,従業員の現状把握と,従業員ごとの将来のライフイベント(結婚・育児・介護など)の予測にもとづく要員計画が必要である。とくに介護については,状況把握に積極的でない企業側の姿勢を変えない限り,将来にわたる要員計画をたてることは困難である。とくに,団塊ジュニア世代が介護に突入する時期を見込んだ,将来の要員計画が必要である。先々の介護を見込まず,要員計画が計画倒れに直面した場合には,余裕をもった労働時間管理の制度運用ができなくなる可能性がある。第一章にあげた労働政策研究報告書No.170(2015年労働政策研究・研修機構)に照らして以下,検討する。報告書より,労働時間調整の方法には,第1に,定刻就業を前提とした個別の事情に応じた時間調整と,第2に,柔軟な勤務形態(短時間勤務制度・フレックスタイム制度など)の制度導入の2つの方法が導き出せる。このことに照らし,高知県企業の調査結果を考察すると,第1の労働時間の「長さ」の是正について,「残業を減らす/なくす」ことへの取り組みは,全従業員に対しても,家族ケアを抱えた従業員に対しても,多くの企業が意識しており取り組む姿勢がうかがえる。いっぽう,第2の労働時間の「柔軟性」への取り組みについては全体として進んでいるとはいえない。制度導入に規模間格差もある。たとえば,家族ケアを抱えた従業員についてみると,「出退時刻調整」の導入は,300人以上規模で69.2%だが,100-299人では28.9%,30~99人で38.0%,1~29人で22.9%と300人未満の企業でその導入程度は低い。また,「1時間単位で有給休暇が取得できる」のは,300人以上規模企業でも23.1%であり,休暇使用の「柔軟性」への対応は少ない。以上より,高知県企業について,全体的に労働時間の「長さ」については是正傾向あるいは可能性がうかがえるが,いっぽう,「柔軟性」への便宜については低い傾向にあり,さらに有給休暇の分割取得などによる休暇取得の「柔軟性」については配慮されるケースが少ないことがわかる。「柔軟性」への便宜が不十分な背景には,何があるのだろうか。次章では,企業へのヒヤリング内容を中心に検討する。