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概要

112

58高知論叢第112号Ⅲ家族ケアに応じた労働時間調整の可能性-高知県内外の企業へのヒヤリング調査より-本章では,高知県及び県外企業を調査した結果をもとに,仕事と育児や介護との両立のための,中小企業に適合的な労働時間管理について考えていく。図表3-1は,企業のヒヤリングによりまとめたものだが,その結果,以下のことがわかった。第1に,現在,すでに残業削減や有給休暇取得率向上に努めている企業は,育児・介護など家族ケアを目的としたワーク・ライフ・バランス(実態はワーク・ケア・バランスともいえる)のために,従業員の必要に応じ時間調整をすることを困難なこととは捉えていない。第2に,中小企業では,現在の労働時間の制度をベースに,個別の事情に応じた調整で対応することは可能であり,そのほうが,大幅な制度改革よりも実施しやすい。とくに,所定の勤務時間,始業時刻・終業時刻の規則が,個別の柔軟な時間調整のネックとはならないと,複数の調査企業(とくにシフト制のある製造業)が回答している。むしろ,製造業のようにチームワークを重視する職場や職種では,働く側に一定の自由裁量をもたせることは難しく,計画的な労働時間をベースに個別調整を施す時間管理方法のほうが受け入れやすい。さらに,時間調整が頻繁になった場合に問題となるのは,第1に,交替可能な状況をいかにつくるか,第2に,時間拘束性の強い仕事についてどう対応するか,第3に,常時人員数に余裕をもたせることができるか(とくに深夜シフトで難しい)である。こうした点の対策として,多能工の育成と活用,計画的なワーク・ライフ・バランスの取り組み事例があげられる。多能工活用の事例として,A社では,「一人三役」と称する多能工化の仕組みを事務職にも導入し,担当者が休んでも他のメンバーが仕事の一部を代行できるように,仕事の合間に担当の職種以外の仕事のチームに参加し仕事を覚え,