ブックタイトル112

ページ
63/88

このページは 112 の電子ブックに掲載されている63ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

112

高知県企業における多様な人材活用のための労働時間管理61つまり,労働時間の調整を可能にするのは,次の要素による。第1に,仕事のタイプが,他の人に代替可能な仕事(多能工化で対応できない土木現場監督などは不可),第2に,時間拘束性の小さい仕事(開発職は単独業務で時間拘束されにくいが,生産・営業はチームや顧客に合わせ時間に拘束されるので代替可能な体制が必要)。第3に,余裕人員を用意できること(夜勤は余裕人員を用意しにくい)である。以上を踏まえ,家族ケアに必要な企業側の支援について次章で検討する。Ⅳ仕事と家族ケアの両立に関する支援設計の考え方ここでは,企業が,仕事と介護を中心とした家族ケアとの両立のための支援を設計する際の考え方について,2つの参考になる文献を紹介し,考察する。米国のNational Alliance for Caregiving(NAC)の2015年の調査報告によると,働く介護者の約半数が「遅刻,早退,中抜き」を経験している。それ以外の休職や短時間勤務・負担軽減等は,15%程度であり,他は非常に少ない。つまり,「介護を抱えた労働者の,職場での最も強いニーズは時間(Time)」7であり「ケアの責任を果たすための日常スケジュールの変更」8であるという状況は,本調査において90年代後半と同様である(図表4-1)。このことは,介護と仕事との両立支援に多くの労働者が共通に求めるのは,日常的なスケジュール変更である遅刻,早退,中抜きであることを示している。同書では,このニーズに応える企業の事例としてIBMの「2時間の仕事の合間時間」(家に帰って被介護者の様子を見て戻る)という制度についても9紹介している。7Marosy, John Paul, A Manager’s Guide to Elder Care and Work, GreenwoodPublishing Group, Inc., 1998, p. 37.8Marosy, Ibid., p. 37.本書のこの部分は,NACのデータをもとに記述されているが,早退・遅刻などの日常スケジュールの変更に関する状況は,本書が書かれた1997年においても49%であった。なお,日本国内に,この時期からの同様の調査はない。9Marosy, Ibid., p. 108.