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概要

112

64高知論叢第112号西久保は,老親介護のリスクの大きさは,複数の要素によりリスクの大きさが決定されることについて述べた上で,「リスクとリソースのバランス,均衡であり,マッチングによって両立に支障をきたす状態を一つずつ排除することが望ましい」「『リスク過重』状態が続くとバランスが失われ,自発的離職や健康阻害,メンタル不全といった継続就業を阻害する事態に陥る。そして,逆にリスクに比較してリソースが十分以上にある『リソース優位』ならば,あえて企業側からの支援で屋上屋を重ねる必要はない」11と述べている。図表4-1のように,リソースとリスクは,多様な要素が関連し合って,介護の均衡状況が決定されるが,介護しながら働く人に対する企業側からの「勤務時間・休暇・転勤」の支援は,より状況の軽い人には多くを必要としない。先の米国の長年の調査からも,仕事と家族ケアとの両立には,就業形態の変更や,それに伴う雇用形態の変更をせずとも,フルタイム労働をベースに多少の労働時間の調整で可能になるケースが多いと考えられる。企業にとり,労働時間の複雑なマネジメントを行うよりも,計画された労働時間をベースに調整を入れるほうが管理しやすく生産性を損ねないケースも存在する。今日,家族ケアのために働き方の柔軟性を高めることが強調されるが,1日の就業時間の多少の調整で両立可能なケースも多い。このことから,1~2時間の労働時間の調整が可能なしくみを早急につくり,選択できる制度として社内にアナウンスすることが求められる。おわりに以上,地方の中小企業が,少子高齢社会の下での多様な人材を活用しながら要員確保していく方策を考えるために,家族ケアのために時間的制約をかかえる従業員の労働時間管理のあり方を検討してきた。『仕事と介護の両立』労働政策研究報告書No.170(2015)より,労働時間の「長さ」と「柔軟性」の是正が必要な要素であることをつかみ,それに照らし,高11西久保,同,159ページ。