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概要

112

高知県企業における多様な人材活用のための労働時間管理65知県企業の調査結果を検討した結果,労働時間の「柔軟性」の便宜を図る点において取り組みが不十分であることが明らかになった。ヒヤリング調査では高知県内外の中小企業の取り組みと労働時間の調整可能性について,計画された労働時間をベースに,状況に応じた柔軟な対応の可能性を見出すことができた。米国での報告や,西久保のリスクとリソースのバランスという考え方も踏まえ,介護に必要な労働時間面での企業の対応は,大きな対策をたてることでも,従業員に一律な対応をすることでもない。必要性と実施容易性の観点から,まずは,1~2時間の労働時間の調整が可能になるしくみを構築し制度化することが重要である。高知県のような中小企業の多い地域において,介護に関わる従業員の把握を実施し,問題の潜在化を防ぎ,対応をはかることは人材確保のために必須であり,そのために,残業削減,家族ケアのための出退時刻の調整,勤務時間中の一時外出,突然の休暇などに対応できる労働時間管理,要員計画,仕事管理,組織管理が今後のマネジメントの課題となろう。家族ケアの問題に関する企業側のマネジメントの複雑さを払拭し,早急に対応を準備し,従業員にアナウンスし,従業員の安心感につなげることが求められる。育児や介護への企業側の対応は,従業員にとり,不安を払拭し安心して継続就業が計画でき,それによりキャリア意識の向上につながり,従業員の職場への愛着が高まることが期待できる。従業員の企業への愛着が高まることは離職防止につながり,安心な就業環境であることは,生産性低下の防止と生産性向上につながり,従業員の定着,就職希望者増加による人材の確保にも結びつく。こうした観点から,育児・介護への対応は人事管理上の重要課題であり,とくに介護については育児に比べ組織内の対応が遅れているので,その対応は喫緊の課題といえる。謝辞高知県経営者協会の会員企業の皆様のご協力を得て,育児中・介護中の従業員の労働時間管理に関するアンケート調査を実施することができました。ここに厚く御礼申し上げます。本研究はJSPS科研費:25380507の助成を受けたものです。