ブックタイトル112

ページ
7/88

このページは 112 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

112

日本のファミリービジネスに関する歴史的研究5図表1-1対象企業の内訳(%)本稿先行研究(倉科)倉科(2003)Jose Allouche(2008)のデータと本稿データ(2015)比較している。先行研究のデータの出所も『会社四季報』(東洋経済)であるがリーマン危機以前のデータである。本稿は過去80年間の変化を視野に入れる。筆者作成と倉科氏のF.E,N.F区分とその内訳を以下に示した。なお倉科氏が用いたデータの出所は2000年『会社四季報』であり,筆者が使用するデータは1935年『会社四季報』創刊号と2006年『会社四季報』から2015年『会社四季報』(第3期)及び企業公表資料である。いずれも各年の通期決算が反映されている。日本以外のファミリービジネスの先行研究はアメリカのS&P500を使ったものが比較的多い。本稿で用いる1935年のデータは日本の全上場企業297社のものを使用,2015年のデータはJPX日経インデックス400社に選定されている企業のデータを採用した。ただし,第2次世界大戦前の日本のファミリービジネスの財務に関する先行研究はほとんどない。OKAZAKI Tetsuji(2001)は戦前の財閥系企業のROE分析に関する優れた研究である。ただし,財閥系企業をファミリービジネスとして捉えてはいない。先行研究の多くはファミリービジネスが非ファミリービジネスより経営的に優位にあることが指摘されているが,いずれもその平均値を比較したものであり,分散は検討されていない。かつての日本の巨大ファミリービジネスは明治期から形成された財閥であった。財閥本社は戦後占領軍によって廃止の対象となり,財閥系ファミリービジネスは全て非ファミリービジネスとなった。戦前の企業は旧植民地に軸足を置く企業が多く,軍需に依存する企業が多かった。また繊維やゴム,製糖,植民地経営の企業が少なくなかった。1935年と2015年とは産業構造も大きく異なっ