ブックタイトル112

ページ
72/88

このページは 112 の電子ブックに掲載されている72ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

112

70高知論叢第112号れる人達は,それぞれ苦労しています。それをよく理解しなければなりません。成功者は数千分の一,数万分の一に過ぎません。とくかく現実はきびしいというのが田舎暮らしです。直視しなければなりません。」というのが少し極論かもしれないが,典型的な見方でもある。別の郷土史家は移住の可能性は50分の一という。田舎への移住ブームに水をかけるような悲観論と捉えられるかもしれないが,これも「年寄の冷や水」として老婆心ながら,いずれもIターンの困難と試練を物語っている。高知の5市町村は人口社会増さらに,今年2月12日付高知新聞の社説では,昨年度,社会増を実現したのは,香南市のほか,安芸郡芸西村,北川村,高岡郡檮原町,幡多郡三原村の4町村。過去5年間で,転入者が転出者を上回る「社会増」を実現させたことが分かった。地方はいま,死亡数が出生数より多い「自然減」と,転出者が転入者を上回る「社会減」の二重の人口減少に苦しんでいる。特に自然減は長年の少子高齢化の結果であり,生老病死は自然現象でもあるから,くい止めることはできない。香南市は2010年に陸上自衛隊の連隊が移屯し,宅地開発によって高知市のベットタウン化も進んでいるのが特徴だ。これに対して,4町村はいずれも平成の大合併では単独自立の道を選択した共通点がある。移住者の受け入れや,中学卒業までの医療費無料化など子育て支援に早くから努めてきた。檮原町は移住者用住宅のリフォームや檮原高校への海外留学支援も奏功したとみられる。単独での生き残りへ,人口対策も強い危機感を持って臨んできたことが伺える。わたしが2月に実施した室戸・東洋町方面の調査で移住相談員に聴いた話だが,室戸や東洋町への近年の移住者の中には,子供の山村留学がきっかけとなった場合もあるという。