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概要

112

72高知論叢第112号戦後増えつつあったマスオさん現象においてもイエのしがらみが強く,マイナスイメージが拭えない。そこで,婚姻を介在して移住してきた男女のことを嫁ターン,婿ターンという造語を使いたい。Uターンには息子・娘ターンと孫ターンがある。孫ターンはつまり,1世代飛んで,祖父母か外祖父母の土地,家屋,農機具や農業技術及び人脈を受け継いだ場合である。Jターンとは地方から大都市へ移住した者が,生まれ故郷の近くの規模の小さい地方都市圏,中規模な都市に戻り定住する還流現象。例えば,高知市長岡郡大豊町出身者が東京へ移住した後,高知市へ戻る場合。出身県内での移動もあれば,農村部出身地から別の農村地帯への移住,つまり田舎から田舎へ移り住む場合もある。わたしは97年高知へ赴任以来,農村の生業変遷とその担い手たちの動向を自分なりに追いかけ続けてきたが,振り返れば,土佐では数多くの異郷人移住者たちに出合った。高度成長期以来の日本が悩まされてきた公害問題を取り上げた有吉佐和子著『複合汚染』の刊行以来,若者の故郷回帰の静な社会風潮がみられ,高卒や大卒の若者たちが都市での生活に疑問を感じ,自分の可能性を見出そうとして農村への移住が始まった。高知県ではわたしの限られた見聞だけでも,移住40年,30年,20年,10年など数多くの異郷人が地道に活躍している。彼らの中には,慣行農業1本立ての者もいれば,半農半X,または農的な暮らしの者もいて,実に多種多様で十人十色。“伝統”に束縛されぬ彼らは自分の手で住み家をつくり,移築したり,「気に入った場所に気に入った家をつくったり」。その人間関係も至って爽やかてきとうふきで気持ちが良い。補助金を充てにしない若者たちの?儻不羈な姿勢に胸を熱くする想いがする。彼らに共通しているのは「知足常楽」(足るを知る心があれば,常に楽しく気持ちも楽になれる),「和而不同」(和して同ぜず),そして労苦をいと厭わずの3点が感じられる。多くの方々はすでにムラに深く根を下ろし逞しく適応し,先住民たちにとっても頼りになる中堅的な存在となっている。インターン最近,学生田舎体験も目立ち,休学して田舎暮らしを敢行する若者にも何人も出会った。投網漁や罠猟をし,捕獲した猪鹿の解体や皮鞣しをしたり,ジビ