ブックタイトル112

ページ
75/88

このページは 112 の電子ブックに掲載されている75ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

112

田舎回帰解読覚書73エとして肉の加工販売を目指したり,様々な試みをする彼らは立派に自活しているためか,その眼がキラキラ輝いているのだ。いつの世でも,若者は「朝8~9時頃の太陽のように」元気溌剌。時代を動かす牽引車,機関車的な存在。「今の若いもんはなっとらん!」なんてものではない。真剣に自分自身を見つめ,農村生活を好奇心持って模索しつつ青春謳歌している若者たちの良き友,理解者となりたい。そして,年長者として,彼らから心地良い刺激を受けつつも,静かに見守ってあげよう,というのが昨今の心境でもある。中国の賢者,魯迅先生曰く「道は最初からそこにあるものではない。歩く人が増えると,ひとりでに道が出来上がってくるものだ。」ところが,現代の日本農村には実に多様な生き方がみられる。ざっと分類してみると,1.専業農家2.兼業農家3.半農半x4.農的な暮らし5.非農的な暮らし,などがある。わたしは若いころ,大正時代に始まった武者小路實篤創立の新しき村にかなり関心があった。その新しき村は,去年,創設75周年を迎えた。反戦から始まった新しき村と,高度成長以来,1970年代以降の若者たちの故郷回帰,それに近年の田舎移住をとりまく内外の社会状況に相違があるものの,幾つかの共通点が認められよう。1.Iターン者の多くは農村出身ではないため,農作業が初めてという場合がほとんど。言い換えれば,田園生活の理想に燃え,夢を持っている人々が多い。2.田舎暮らしだからこそ,ちゃんとした生業を営むことが必須であり,自らの経済的基盤を確立しなければならない。田舎でもできる仕事,職をもつことは先決だ。うちそと3.常に“内”“外”の壁に直面している。後来者として,いかに先住民たちと仲良く付き合い,溶け込んでいき,どうすればムラ人になれるか?つまり,田舎暮らしの困難を心身ともに乗り越えなくてはならない,という問題を抱えている。そして,ウチ,ソトの壁を超えて,いっそ新農人として地道に努力する方々も数多く現れている。人間の暮らしには水,燃料(薪),食物,照明などの基本的な条件が必要だが,