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概要

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6高知論叢第112号ている。一方で経営が連続している企業も多い。近年のファミリービジネスに関する研究は少なくないが,あえて80年間の間隔をあけた財務資料を比較するような試みは従来なされなかった。本稿は先行研究を踏まえ,80年間を経たF.Fを比較したものである。2.日本のファミリービジネスの歴史的特質日本のファミリーの事例でしばしば取り上げられる企業は,宮大工から始まった株式会社金剛組である。同社の創業は西暦578年とされており,世界最古の企業とされている。ただし日本は世界で最も長寿のF.Fが多いという見解があるが,それが妥当か否かが明らかになっているわけではない。一定の規模を有する会社は西洋社会の方が長い企業が多い。日本の大財閥の1つである住友財閥は銅精錬で成功した。その歴史は400年以上前にさかのぼり最古の歴史をもつ財閥である。住友本家の当主は住友本社(住友合資会社)の総理事と契約書を交わして任命し,事業は総理事に委任した。他の財閥のように本社や傘下事業の役員にも名を連ねることはなかった。財閥解体以降も旧財閥系の求心力は強く,住友系の企業に就職した新入社員は入社にあたって今日でも住友本家創業地や記念施設を訪問する。渋沢家は今日でも100人を超える同族が一堂に会する行事が続けられている。一方で三菱財閥は岩崎弥太郎・弥之助兄弟や同族が築いた。ただし,明治時代以来土佐の自由党と対立してきた三菱系企業では,土佐の岩崎家を社員が訪問する事は少なかった。かつての旧財閥本家と社員との関係を窺うことができる。日本の株式市場は,1878(明治11)年に東京株式取引所が売買立会を開始して以来,戦中戦後の一時期を除いて約130年の歴史がある。戦時統制経済の下の1943年,日本証券取引所に統合され,終戦とともに停止された。戦後4年を経た1949年4月1日に東京証券取引所が再建されたために同年に上場された企業が多い。近代日本の巨大ファミリービジネスである財閥コンツェルンの多くは,明治前期において明治維新期の政権と深い関係を保ってきたために,財閥の拠点は