ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

102 高知論叢 第113号この地域は福祉施設のない地域であったが,高齢者が非常に多い地域であるため,高齢者が気軽に集まれる拠点となっている。田畑の仕事も伝統文化の継承も,地域の高齢者が担い手となっている。施設の設計段階で,障害者の就労支援事業(労働法が適用されないB 型事業所)にも取り組めるよう,また,地域の高齢者の居場所づくりにもなるよう考慮されている。高齢者や障害者がそれぞれの役割を担ったり,居場所づくりとして,気軽に自宅から外に出られる共生の場,そして,地元住民にとっては働き場にもなることがめざされている。地区内には保育園と小学校があるが,どちらも閉園・閉校の危機に直面しており,子どもが遠くへ通わなければならなくなることもあり,PTA は廃園・廃校に反対している。イベント(お茶会,鞄作り,草履作り,繭細工など)の時には,保育所からも来てもらう。地元住民が先生役になるきっかけづくりにもなっている。子どもがいなくなる危機感もあり,一人ぐらし高齢者が多くなっている。事業開始に当たっては,お便りを全戸配布した。障害児の放課後等デイの利用者と障害者の生活介護の利用者が共同利用している。職員は,保育士,2級ヘルパー,看護師,社会福祉士の4名が放課後等デイで不足しており(保育士と看護師は実務経験を5年以上必要とする),事業所報酬はその分,減算となる。障害のある利用者のことを高齢者は最初は変な人という風に見ていたが,高齢者に飴をくれたり,迎えてくれたり,なついてくれたりするうちに,高齢者の側にも徐々に変化が見られるようになった。関係づくりを重視した居場所づくりが進められている。障害児から見て自分の祖父母が家にいる感じがあり,むしろ同世代がなじめない場合でも,自閉症や身体障害があっても,ここでは自然に接してもらえるようになっている。職員も,ここをどのような場にしていきたいんだろうと思っていたが,一緒にどうしていくかを考えながら,高齢者と障害児など,合わない人どうしを含めた関係づくりが進められている。繭細工は地域の高齢者が作った物である。部屋の造りとしては,高齢者デイサービスを和室で区別しているが,相互に出入りしており,来る人が雰囲気を作っている。現場(介護)経験者がいないなかで,利用者が来る度に,どう向き合うかを考えている。逆に,専門資格をもっている人であっても,頭から入らない。ここの大家でもある看護師は多様