ブックタイトル高知論叢

ページ
124/148

このページは 高知論叢 の電子ブックに掲載されている124ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

高知論叢

122 高知論叢 第113号(4)まとめ3年前の視察調査時と比べ,東日本各地域は,①避難所生活→②仮設住居→③復興住宅という3段階で捉えた場合,おおよそ②から③へ,地域の再生と復興へ,という方向に進んで来ていると言える。被災建築物の瓦礫はかなり姿を消しており,盛り土や公営復興住宅が各地で散見されるようになった。しかし,福島県楢葉町のように,避難生活が長期化したために,とりわけ若い世代が避難先のいわき市などで新しい生活,仕事,教育が定着していくなかで,避難解除後も大部分の住民が帰還できていない地域もある。そのような地域では,戻って来る割合が高い住民は高齢世代が中心となり,高齢化が急速に進む。当面は,短期間で急速に進む高齢化の下で,必要な福祉,医療,住環境の整備や新たな近隣関係の再構築を進めながら,若い世代の復帰に向けた共生型まちづくりを徐々に整えていく方向が見出され得る。高知県などにおいても,少子・高齢化,過疎化が進む下で,あったかふれあセンターや集落活動センターなど,小さな拠点を軸とする地域づくりが展開されている(注8)。宮城県においても,地域に根ざした共生拠点で高齢者,障害者,児童の関係づくりが進められている。支援職員が専門性を生かしつつも,高齢者介護,障害者支援,児童福祉という専門職の枠を越えるとともに,当事者間でも,相互理解しながら地域で共生する関係が形成されつつある。若い世代の転出が進み高齢化が急激に進む状況の下でも,地域の高齢者と障害児・者の間で双方向の互酬性のある関係が見出された。岩手県では,大槌町のように町全体が壊滅的な被災を受けていながらも,社会福祉法人やNPO 法人の地域ニーズに根ざした貢献活動により,高齢者・障害者・児童の地域共生の場づくりを定着させてきている。大船渡市においては,地域住民や協力者が主体的に考え実行しながら,地域の中に溶け込む居場所づくりが進められており,「地域の家庭」が存在するかのような住民関係が生まれている。そして,釡石市や大船渡市における仮設住居を拠点とする取り組みは,ハード面よりも,被災による精神的な孤立化を防ぐためのソフト面の支援,