ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

被災地域における地域共生拠点と地域づくり 123活動として注目される。高齢者,障害者,児童が互いの制度的な垣根を越えて共に生きることは,第1に,当たり前の地域を再生し,互いの良さや強みを生かし合い,弱みを補い合う関係を生み出す。第2に,高齢者・障害者・児童相互間の双方向性,互酬性を生み出し,「支援する人」と「支援される人」という固定的な関係を流動化させ,障害者や高齢者にとっても,誰かの役に立つ喜びを見出す機会が生まれる。第3に,互いの心と心の交流が,生きがいや孤立化防止につながり,地域の中に「心の居場所」が生まれる。第4に,住民の主体性や役割の発揮を通じて,誰もがかけがえのない存在として「生活の主人公」になれる。第5に,地域における共生拠点が,健康づくり,見守り,相談支援,就労支援などの機能を持つことにより,生き生きと安心して暮らせるまち・むらづくりの「小さな拠点」になり得る(注9)。その意味では,地域共生とは,複合型施設や大型のハコモノづくりではなく,共生の場づくり,機会づくり,人と人の関係づくりであり,一つ屋根の下の家族的な関係を維持できる小規模の地域交流・生活拠点を軸とする。それは,東日本において極限状況に直面した被災地域においても,地域再生・復興につながる「小さな拠点」として,確かな息吹を上げ始めている。おわりに生活困窮者自立支援法(2013年12月成立,2015年4月施行)が本格的に各自治体で展開され始め,様々な生活困窮問題への対応が求められている。また,地域医療・介護総合確保推進法(2014年6月成立,介護分は2015年4月施行)も実施されつつあるが,それによって専門的な介護保険サービス(訪問介護・通所介護)の対策から外される要支援高齢者も出てくる。地域共生の拠点は,生活困窮者(経済的困窮者や障害者,孤立しがちな高齢者,虐待やいじめを受けた子ども,DV 被害者,ひきこもりの人など)にとっても居場所や就労(準備)の場となり得るし,要支援高齢者が通える地域の受け皿ともなり得る。2017年2月7日には,介護保険法改正法案(「地域包括ケアシステムの強化