ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

125高知論叢(社会科学)第113号 2017年3月研究ノートアメリカにおける非公開会社の会計基準設定プロセスが金融商品会計基準の改善に与える影響   非公開会社におけるヘッジ会計の複雑性の低減   山  内  高 太 郎はじめに金融商品取引の拡大,企業活動への影響の増大といった経済環境の変化から,財務諸表利用者の有用性のために金融商品を財務諸表で認識することが求められるようなった。こうした社会的な要請にたいして会計基準設定主体は,多様な取引の状況を財務諸表利用者に伝達するために多様な基準や規定を設定し,開示を増加させた。この結果,多様な基準や規定の理解や適用における問題が生じ,増え続ける開示要求は財務諸表作成にかかるコストを増加させることとなった。さらに,公正価値による測定は,会計情報に不確実性を増加させ,財務諸表作成者の判断の余地を広げることとなった。この結果,金融商品会計基準は複雑化し,財務諸表利用者においても複雑化した会計基準からもたらされる会計情報を理解するうえで問題が生じるようになった。こうした状況の改善のために,2005年アメリカ財務会計基準審議会と国際会計基準審議会は,金融商品会計の改善と複雑性の低減について共同プロジェクトとして取り組むことを決定した。2008年の金融危機を契機に,金融商品会計基準の見直しは加速され,その後の議論の結果,2 つの会計基準設定主体は個別に金融商品会計の改善と複雑性の低減について検討を進めることとなった。本稿では,こうした状況の中,アメリカにおいて2012年に設置された非公開