ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

128 高知論叢 第113号を公表した。PCC フレームワークは,FASB とPCC が非公開会社のためのGAAP の代替案や代替基準の決定を支援するものである7。PCC フレームワークは,利用者の目的適合性(user-relevance),コストとベネフィットの評価(cost-benefi t evaluations)の観点から検討を行い,非公開会社がGAAP に基づき財務諸表を作成する際の複雑性(complexity)やコストを減らすことを目的としている8。PCC フレームワークでは,最初に,適用される非公開会社の範囲を,適用対象外となる条件を定めることによって明確にしている9。これは,非公開会社が公開会社と異なり,法や規制によって財務諸表の作成や提出を義務づけられていないため,適用対象を限定してしまうことで非公開会社のための会計基準を必要とする実体が適用対象外となり適用できなくなることをさけるとともに,非公開会社のための会計基準をGAAP 内の例外規定として設けるとしたことから制度設計者の意図しない財務諸表作成者の裁量を拡大させないために必要であったと考えられる。このことについて,「審議会は,実体がU.S. GAAP の範囲内で認められる代替基準(alternatives)を適用することができるかどうかは,最終的に規制機関,貸手,その他の債権者やU.S. GAAP の財務諸表を要求する財務諸表利用者によって決定されることになるであろう10」というように,非公開会社のための代替基準が適用されるかどうかは,ある実体の選択というよりも,非公開会社とその財務諸表を要求する利用者との関係の中で決定されることになる。また,PCC フレームワークでは,財務諸表利用者の目的適合性の観点から公開会社と非公開会社の財務報告に違いが生じるとして,主要な財務諸表利用者の数と利用者の経営者へのアクセス11,主要な財務諸表利用者の投資戦略,非公開会社の所有と資本構成,非公開会社における会計実務を行うための資源と教育の問題をあげ,公開会社と非公開会社の財務報告の問題をわけるための説明がされている12。ここで注目すべきは,PCC フレームワークは非公開会社の財務諸表作成における複雑性やコストの問題よりも財務情報利用者の目的適合性に重点をおいて論理展開がなされている点である13。これによって,FASB の概念フレーム