ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

130 高知論叢 第113号固定金利を支払う金利スワップ契約を結ぶことで,変動金利の借入を固定金利の借入に変更するのと同じ経済的な効果を非公開会社が得ようとする場合に,GAAP を簡略化した(simplifi ed)代替的な会計アプローチによるべきである(provide)という意見にもとづいて行われた14。現行のGAAP では,すべてのデリバティブの当初および事後の測定は,公正価値によって行われる15。公正価値の変動(volatility)は,損益(earnings)として認識されることとなるが,特定の要件を満たした場合に,ヘッジの効果を財務諸表で表すためにヘッジ対象とヘッジ手段の損益と対応させるヘッジ会計の適用を認めている。ヘッジ会計を適用できない場合,ヘッジ手段となるデリバティブの公正価値の変動は,損益として認識されることとなる16。非公開会社のステークホルダーの懸念は,現行のGAAP におけるヘッジ会計の適用要件を満たすことがコスト等の問題から困難であり,ヘッジ会計を適用できないことで金利スワップにかかるデリバティブの変動が,損益として認識されるということから生じていた。さらに,多くの非公開会社の財務諸表作成者と利用者は,とくに,スワップの契約相手(counterparty)と変動金利による借入の貸手が同じ場合において,変動金利の借入を固定金利の借入に変更するのと同じ経済効果を得る目的で締結するスワップの公正価値の決定と表示に関する目的適合性とコストに疑問をもった。これは,貸手とスワップの契約相手が同じ場合,一般的にスワップは借入期間中保有され,固定金利による借入と同じになるように契約が結ばれることになるからである17。PCC は,こうした問題がPCC フレームワークの目的で述べられた,目的適合性,コスト,複雑性の規準に合致することからアジェンダに加えることを決定し,審議を行った。この結果としてPCC は,公正価値の代わりに決済価値を用いる「複合商品アプローチ(combined instruments approach)」と「簡略化したヘッジ会計アプローチ(simplifi ed hedge accounting approach)」という2 つのアプローチを提案するに至った18。