ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

アメリカにおける非公開会社の会計基準設定プロセスが金融商品会計基準の改善に与える影響 131① 複合商品アプローチ複合商品アプローチは,変動金利による借入(負債)とその借入を固定金利に変換するためのスワップを複合商品(combined instruments)とみなして,一定の条件に合致する場合において,決済時点を除いて,スワップを実体の財務諸表に記録しない方法である19。この方法は,負債とスワップをあわせてひとつの構成単位と考えることで,損益計算書に固定金利による借入の影響が反映され,デリバティブ(スワップ)の変動を低減することができ,情報利用者の目的適合性を損なうことなくコストの低減をはかることができると考えられた20。しかし,この方法には,GAAP との整合性,つまり,FASB がステイトメント第133号においてこの方法と類似する合成商品会計(synthetic instrument accounting)を認めていない(rejected)という問題があった21。② 簡略化したヘッジ会計アプローチ簡略化したヘッジ会計アプローチは,変動金利による借入(負債)とその借入を固定金利に変換するためのスワップを異なる金融商品とみなし,簡略化したショートカット法を非公開会社により容易に適用するというものであり,非公開会社は,ASC トピック815の適用においてヘッジの非有効性の評価を特定の条件のもとで免除されるとともにヘッジの金利にプライムレートや非ベンチマーク金利を用いることが認められるというものである22。この方法の初期の検討段階では,ヘッジの非有効部分が存在しないとして会計処理を簡略化するショートカット法と同様に,公正価値測定を用いることを前提としていた23。このため,GAAP による財務報告との整合性が高いことが利点としてあげられていたが,公開草案において,公正価値ではなく決済価値によって測定をすることに変更された。このことは,非公開会社にとってGAAPとの整合性よりも公正価値を用いることに問題があったことを示している。この方法に対する反対意見として,この方法は非公開会社の特定の条件に限らず適用することができるため,今後,FASB がヘッジ会計の簡略化を検討する際に問題となるかもしれないことがあげられた24。