ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

134 高知論叢 第113号約が開始後の最初の年次財務諸表を公表する日までに行わなければならないとされた31。また,変動金利を受け取り,固定金利を支払うスワップのキャッシュ・フロー・ヘッジの非有効部分については想定しなくてよいとされた32。こうした対応により,簡略化したヘッジ会計アプローチを適用することで,財務諸表作成者の負担が軽減されることとなる。3.PCC による会計基準設定プロセスの制度的な課題アメリカにおける会計基準の設定と公表された会計基準に対する社会的な合意形成は,デュー・プロセスと概念ステイトメントに支えられていると考えられる。FASB は,デュー・プロセスという決められた手続きにより会計基準が設定されたという事実に基づき多様な利害関係者間の利害調整を行うとともに,デュー・プロセスをへて公表された会計基準の社会的な正当性を保証することとなる。また,概念ステイトメントは,GAAP ではないが,公共の利益に資することを目的とし,FASB が会計基準を開発する際の指針となり,FASB とその構成員に財務報告の適切な内容(appropriate content)と固有の限界(inherentlimitations)の理解を提供するものであるとされる33。FASB の概念ステイトメントは,一般目的の財務報告の基礎を形成することを目的としており,一般目的の財務報告の目的は,現在および潜在的な投資家,貸手,その他の債権者に,実体に資源を提供することについての意思決定に役立つ報告実体に関する財務情報を提供することにある34。また,FASB 概念ステイトメントで述べられる有用な財務情報の質的特徴の中で,目的適合性(relevance)と誠実な表示(faithful representation)を基礎となる質的特徴として位置づけている。非公開会社の会計基準の設定において,FASB とPCC が判断の論理的な根拠とするのは,PCC フレームワークであり,PCC フレームワークは,FASBとPCC が非公開会社という限定された対象に適用する会計基準の決定を行うための支援を目的としている。また,そのための基礎的な考え方は,利用者の目的適合性(user-relevance)とコストとベネフィットの評価(cost-benefi t