ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

アメリカにおける非公開会社の会計基準設定プロセスが金融商品会計基準の改善に与える影響 135evaluations)に重点をおいたものとなっている。このように,FASB 概念ステイトメントとPCC フレームワークでは目的が異なっている。つまり,FASB の概念ステイトメントが,社会的な利害調整や合意形成に機能するのに対し,PCC フレームワークは,PCC がFASB に対して提案の妥当性を説明するために,FASB がPCC の提案を支持する(endorse)かどうかを判断するために用いられる。このように,これらの論理的な説明が機能する場面と対象の範囲が異なっている。さらにいえば,対象の範囲の違いだけでなく,そもそも非公開会社は,法や規制といった制度的な強制がなく,借入時に金融機関からGAAP に基づく財務諸表の提出を求められたために必要となるというように,個々の取引の中でGAAP の適用が決定されており,仮に個々の取引の中でGAAP 以外の選択肢が提示されればGAAP を用いる必要性はなくなる。つまり,非公開会社においてGAAP を適用するかどうかの選択の決定権は,基準設定主体ではなく適用する企業が側にあるということである。しかし,非公開会社の取引相手が,非公開会社ではない,慣行的にGAAP を用いる,他の好ましい選択肢がない等の理由からGAAP の影響を間接的にうけることとなる。概念的にGAAP は一般目的で作成されるため,本来であれば非公開会社に適用する際に例外規定を設ける必要はないはずである。しかし,経済環境の変化にともなう取引の多様化や会計不正といった社会問題への対応の必要性からGAAP は変化が求められ,一般目的であるがゆえに複雑なものとなり,GAAP 適用にともなうコストの増加が問題となった。PCC をFASB と異なる基準設定主体とせず,GAAP と異なる会計とせずGAAP の一部としたのは,複数の会計基準が存在することから生じる基準間の対立や競争といった制度的に好ましくない状況を作り出さないことが一つの要因として考えられる。PCC の提案の基準化をFASB のデュー・プロセスに組み込んだことは,手続き上の問題を生じさせないという点では問題がないようにとらえることもできるが,審議過程において,FASB メンバーと異なり,非公開会社に関わるという限定的な条件によって選ばれたPCC メンバーの意見が強く反映されるこ