ブックタイトル高知論叢

ページ
138/148

このページは 高知論叢 の電子ブックに掲載されている138ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

高知論叢

136 高知論叢 第113号とから,一般に認められたという合意形成の点において問題が生じるかもしれない。また,FASB の概念ステイトメントとは異なるPCC フレームワークに基づいてアジェンダとするかどうかの判断,決定が行われるため,一部の利害関係者を有利とするような基準開発が行われる可能性を秘めているといえる。こうした状況を作り出したことについて,Karthik Ramanna は,アメリカ商工会議所(Chamber of Commerce)とSEC の開示要求の拡大とのせめぎ合い,小規模な監査事務所やAICPA の会計基準設定における発言力の問題,2008年の金融危機において公正価値会計が潜在的に果たした役割に対する批判によりPCC の設置時においてFASB の発言力が弱かったこと,最終的には,FAF がPCC の設置における政治的な過程のなかで妥協点を見いだせなかったことを要因として述べている35。FAF は,PCC の3 年間の活動についてのレビューを通して,PCC の存続を決定している。このことは,現在のアメリカの会計制度においてより良い解決方法が見いだせていないことを意味しているのかもしれない。4.非公開会社におけるヘッジ会計の複雑性の低減の意味FASB は,2005年10月の国際会計基準審議会(International AccountingStandards Board : IASB)との合同会議において,金融商品会計における報告の改善と複雑性の低減について,IASB と共同プロジェクトとして取り組むことを決定した。2008年3 月,IASB はFASB との共同プロジェクトの成果としてディスカッション・ペーパー「金融商品の報告における複雑性の低減」を公表した。一方,FASB は,IASB のディスカッション・ペーパー公表と同時に,IASB のディスカッション・ペーパーに質問を追加し,意見聴取(Invitation to Comment)「金融商品の報告における複雑性の低減(IASB ディスカッション・ペーパーを含む,金融商品の報告における複雑性の低減)」を公表した。このディスカッション・ペーパーでは,金融商品の財務報告の複雑性の低減は,財務諸表の作成者,監査人,利用者のために行うものであり,金融商品会