ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

コンビニエンスストアの全国浸透と地域経済 15に,契約時点での情報格差や本部側による不適切な情報提供が挙げられる。上記のように,オーナー候補は店舗経営の未経験者が多数派であり,契約現場はいわば「プロと素人が最初に出会う場」になりやすい。しかし,加盟前に十分な情報が提供されているとはいいがたく,出店場所での具体的な売上・収益予測も示されないため,オーナー側は本部の説明する限られた情報を基に判断せざるをえない。したがって,開店後の重労働や現実の売上の厳しさをオーナーが実感するにつれ,次第にトラブルに発展するケースが続発している。第2に,加盟後における本部の指揮権,具体的には店舗経営の自立性の制約ならびにいわゆる「コンビニ会計」を基本とする財務支配である。例えば,営業時間については,契約期間中は年中無休で24時間営業を原則としており,いかなる都合があっても短縮営業はほぼ認められない。また発注権限についても,オーナーの自由裁量はほとんどなく,本部の指示にしたがって提示された仕入値のままで日々発注を行う。チェーン全体では大量調達によるコストダウンが予想されるものの,店舗の仕入値にはそうした効果は一切見受けられず,請求書・領収書も非開示である等,適正価格の観点からの不透明性も付きまとっている30。一方,会計面では,まず高率のロイヤルティが指摘できる。表3が示すように,いずれのチェーンも,Cタイプでは粗利益の5割以上を本部に支払う義務があり,売上が高い部分については率も上がっていくことが容易に見て取れる31。しかも,注意しなければならないのは,ロイヤルティ計算の基礎となる粗利益は,実際の売上高ではなく,棚卸・廃棄ロスが省かれた「純売上高」で調整  その歴史的考察  」『早稲田商学』第423号,2010年3月,さらに本間重紀編,前掲書,植田忠義,前掲『「激変の時代」のコンビニフランチャイズ』,三宮貞雄,前掲書で紹介されたオーナー問題を参考に整理して記述している。30 この問題については, 加盟店オーナーがセブン-イレブンに仕入代金開示を求めた訴訟で,2008年に最高裁が報告義務があるとする判決を下した。同訴訟では, 一部商品で加盟店の仕入値がディスカウントストアの店頭価格を下回るケースが根拠になった(「最高裁『加盟店に仕入れ代開示を』システム改修負担発生も セブン-イレブン」『日経流通新聞』2008年7月7日付)。31 一方,土地・建物を自前で用意するAタイプのロイヤルティは,Cタイプに比べて一般に低めに設定されている。例えば,セブン-イレブンでは43%,ローソン34%である。