ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

16 高知論叢 第113号算出される点である。つまり,この方式では,本来の売上高よりも粗利益が膨らみ,発注量が増える分だけ本部のロイヤルティも嵩上げされる反面,加盟店側は一連のロスが費用として加算されるため,可処分所得がさらに目減りする仕組みになっているのである。さらに,コンビニ特有の「オープン・アカウント」という会計システムも,加盟店には不利に働いている。これは,指定口座に売上を入金して本部が売上を一括管理し,債権債務を相互相殺した上で,残余の金額が加盟店へ流れるというシステムである。仮に仕入代金・ロイヤルティ・営業経費・引出金が出資資本金を上回る場合には,本部から加盟店に対して与信がなされる仕組みとなっている。しかし,この与信は,通常の店舗では無利子の買掛金に該当するものであり,加盟店の会計処理代行と本部への利払いを通じた債務の追加負担を通じて,加盟店が貸金によって拘束される仕組みにもつながっている。つまり,店舗経営や会計を通じた加盟店の義務負担からは,コンビニ店舗の「独立した経営」が虚構にすぎず,オーナーは本部の指揮下で働く労働者に近い存在にならざるをえないと判断できよう。このように「独立した経営」からはほど遠い制約された自立性の中,加盟店オーナーの間では苦悩や不満を抱く者が拡がっている。例えば,オーナーの収入は,売上純利益から高率のロイヤルティを本部に支払った残余が充てられるが,実はそこから人件費や光熱費,廃棄費用を支払わなければならないため,実際の可処分所得は僅少なレベルに陥らざるをえない。また,オープン・アカウントの下で売上額を毎日本部に送金しているが,売上状況によっては加盟店の資金不足や債務累積が発生するケースも生じている。したがって,各店舗では限られた裁量の中で経営努力をせざるを得ないが,営業時間の決定権は本部にあるため,年中無休の長時間加重労働に日々追われ,身体的にも精神的にも苦痛を強いられている。しかも,当初は好業績を上げた店舗であっても,オーナーにテリトリー権は認められていないため,高収益地域では他チェーンのみならず同一チェーン本部が事前予告なしに近隣に出店するケースも後をたたず,競業激化を背景とする売上・可処分所得の低下も発生している。このような中,社会保険に未加入のオーナーが近年問題視されており,現行のシステムでロイヤルティに加えて加盟店の費用負担が求められれば,たちまち店舗経営が行き