ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

34 高知論叢 第113号内にすべて廃業に追い込まれ,2009年までに市内から完全に姿を消すに至った。他方で,スリーエフへの転換組も,半数強が5年前後で店を閉じており,現在も存続しているのは,スリーエフからローソンに再転換した2店とサークルKへの転換組のわずか計3店舗にすぎない。コンビニ戦争は,競争激化を通じて地場コンビニを退場させ,地元オーナーの生活を翻弄していったのである。地域社会へ与えたもう1つの影響は,コンビニ以外の中小小売店へのインパクトである。例えば,経済産業省の『商業統計調査』によると,高知県内では大型店やコンビニに押される形で中小商店の廃業が進んだことから,1999~2002年の間に小売事業所はマイナス11.9%と,全国最悪の減少率を記録した57。また,2002年に高知県が行った小売業経営者調査によると,自店の周辺にコンビニの進出があったという回答が山村を除く地域では4割強に上っており,特に食料品小売店では,45%の商店が「曜日にかかわらず全般に売上が落ちた」と回答している58。このような中,とりわけコンビニのターゲットとされたのが,酒販店である。当時のコンビニ加盟店は,酒販店の業態転換が中心であり,大型店の規制緩和やコンビニでの酒類販売が中小酒販店の経営を圧迫するようになっていたため,酒販店の間では,コンビニに転換するか,それとも酒販店として生き残るかの厳しい選択を迫られるようになった。競争激化を背景に零細商店から順に淘汰が進み,単独での存続が困難な時代を迎える中,コンビニ以外の中小小売店も,いわば「ハムレットの心境」に立たされるようになったのである59。(3)セブン-イレブンの高知進出と「第2次コンビニ戦争」:2000年代中盤以降その後,「コンビニ戦争」の再燃をもたらしたのが,2015年から始まったセ57 「昨年の商店数,高知11.9%減 全国最悪」『日本経済新聞』2003年3 月20日付。58 高知県商工労働部経営流通課『小売業経営者動向調査報告書』2002年11月,61-62頁。ちなみに,同調査では,食料品以外の小売業を含むトータルでは64%の店舗が「売上への影響は特にない」と回答していることを基に,コンビニ進出の影響は「小さい」と評価していた。これは,食料品中心のコンビニの影響力を明らかに過小評価したものといわざるを得ないだろう。59 「コンビニ戦争本番」『高知新聞』1997年5 月26日付。