ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

コンビニエンスストアの全国浸透と地域経済 37とが予想される。他方で,それ以外の中小チェーンや単独店を含む「その他」のシェアは, 1 割を切るまでに周辺化している。つまり,現在では,大手コンビニ資本による支配が確立するとともに,かつて県内を特色づけた地場コンビニが泡沫状態と化している姿が明らかである。あわせて,出店地域を示した表10についても,改めて確認しよう。2015年になると,事業所が最も集中する都心部の高知街ならびに都心周辺部の下知で店舗数が急増しており,10年前ぐらいから始まっていた市内中心部への出店がさらに強まる一方,面積でみたコンビニ密度は市平均の2?に1店に対して高知街は100㎡に1店とさらに不均等が広がってきたことが分かる。とりわけ出店ペースが加速化しているのが,高知駅-はりまや橋間ならびにはりまや橋-高知城間の一帯である。帯屋町商店街を中心とするエリアには,コンビニだけで10店以上がひしめき,同商店街のアーケード内でもまるで「オセロゲーム」のように真ん中を挟み撃ちにする出店パターンが生じている。このような過当競争が進む中,同業他社に加えて同一チェーン同士の競合も生じており,オーナーの間からは「完全なオーバーストア」「先の見えない消耗戦」と嘆息の声が聞こえてくるほどである68。以上のように,高知市内のコンビニ業界は,1990年代中盤までの地場スーパー系列のボランタリー・チェーンや個人経営中心のいわゆる地場コンビニ中心の構造から,2度の「コンビニ戦争」を経て,今では地場コンビニは後景に追いやられ,大手資本に包摂される構造へと様変わりしている。と同時に,コンビニの浸透と大手資本の進出は,地域内で一層の過当競争を引き起こし,コンビニ業界のみならず中小小売店や地場スーパーをも巻き込みながら,地域商業構造に新たな影響を及ぼしている。では,これらのアクターは,現在どのような行動をとり,一体どのようなインパクトを地域にもたらしているのだろうか。次章では,最新の「第2次コンビニ戦争」のインパクトについて,大手資本のセブン-イレブン,地場スーパー,既存コンビニ・オーナーの各レベルに即して,詳しく検討してみることにしよう。68 「コンビニ県都で“オセロ” 首位参入「呉越同舟」に幕?」『高知新聞』2015年4月4日付。