ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

2 高知論叢 第113号せ,高い収益を確保しつづけている。しかし,こうした本部の成長とは対照的に,個々の加盟店は,店舗運営に不可欠な長時間・加重労働や割高なロイヤルティ負担,店舗間の競争激化にさらされ,オーナーの苦境が次第に深刻化するようになった。1990年代末からは,契約内容をめぐるオーナー側の不満が表面化し,本部の方針への異議申し立てを求める訴訟に発展するケースが表れるようになった3。さらに,オーナー側の交渉力を高めるための当事者団体の結成や労働組合の結成も進んだ他4,公正取引委員会の排除措置命令や経産省の日本フランチャイズチェーン協会に対する「指導・要請」等,社会的規制の動きも出てきている5。このような中,最近では,コンビニ業界の再編が二重に進行している点が注目される。第1 に,チェーン間の格差拡大と寡占化である。背景にあるのは,大手コンビニ資本による出店加速化であり,本部同士の統合・提携を背景に,セブン-イレブン,ローソン,ファミリーマートの三大資本への集中が明瞭になりつつある。もう1つは,出店エリアの地理的拡大である。特に,セブン-イレブンによる高知,青森,鳥取各県への進出,さらに沖縄県への出店計画発表は,地域全体に大きな衝撃を与え,地元のスーパー資本を巻き込んだ再編劇をもたらしている6。では,出店未開拓地域への大手コンビニの触手は,地域にどのような影響をもたらすのだろうか。本論文では,大手資本にとってのフロ3 オーナーによる訴訟は,1998年のカスミ・コンビニエンスストアの集団訴訟事件が契機であり,それ以後被害者の会を結成して本部に対して訴訟を起こす例や,原告オーナーを支援するコンビニ・フランチャイズ問題弁護士連絡会(http://www.konbenren.net/index.html)の設立という形で展開してきた。4 1998年4月に全国FC 加盟店協会の前身にあたるコンビニ・FC 加盟店全国協議会が(http://www.fcajapan.gr.jp/),2009年8月にはコンビニ加盟店ユニオンが設立された(http://www.cvs-union.org/index.html)。5 代表例として, セブン-イレブンが加盟店の見切り販売を制限していたことに対して,公正取引委員会が2009年に独占禁止法の「優越的地位の濫用」に当たると認定し,排除措置命令を出した事例が挙げられる(公正取引委員会「株式会社セブン-イレブン・ジャパンに対する排除措置命令について」2009年6 月22日,http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h21/jun/09062201.html)。6 セブン-イレブン最後の空白地域である沖縄でも,2018年進出を目指しており,300店規模の体制を図ることが公表された。「セブンイレブン,沖縄に300店 2018年進出 一気にシェア獲得狙う」『沖縄タイムス』2016年8月16日付。