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概要

高知論叢

コンビニエンスストアの全国浸透と地域経済 47以上のように,サニーマートは,セブン-イレブン出店後の新たな競争局面において,スリーエフからローソンへの再々くら替えを図ることで,自社主導の地場コンビニ経営から大手資本主導のコンビニ経営への包摂の道を選択したのが大きな特徴である。このような流れの中で,共同出資会社の設立や商品の相互交流を通じて戦略的適応を図ろうとしているが,同時に店舗展開をめぐる労働力確保の課題にも直面していることが見て取れる。3.「第2次コンビニ戦争」と既存店へのインパクト前節では,セブン?イレブン進出に伴う地場スーパー3社の対応を検討したが,それ以上に大手資本進出によって影響を被るのが,競争の矢面に立たされているコンビニ既存店である。そこで,本節では,各店舗への影響について,県中央部で営業しているローソン,ファミリーマート,サークルKの各オーナー・ヒアリングを素材に検討し,現場の状況と課題について浮き彫りにしてみることにしよう。(1)ローソンA 店のケース77まず,ローソンA店から見ていこう。同店のオーナーは,コンビニ歴10年以上で,契約2期目に当たるベテラン・オーナーである。郊外に立地し,日販は平均50万円を上げている。それでも,経営は厳しいという。というのは,夫婦共働きで,本部へのロイヤルティ支払,さらには人件費や廃棄費用等を差し引くと,オーナーの手取りは微々たるものだからである。ベテラン・オーナーですら,これまで確定申告水準の年間300万円も残ったことがないとのことで,「1万円の売上を上げることがいかに難しいか」を力説している。また,経営の厳しさという点では,コンビニ特有のオープン・アカウントについても指摘された。例えば,商品納入分は実質買取制で「売上」扱いと見なされるため,実際に販売を実現させなければ,店舗が損失を被る仕組みになっている。加えて,売上については本部・東京に毎日送金されるが,本部からの77 ここでは,特に断りのない限り,ローソンA店のオーナー・ヒアリング(2016年6月20日)に基づく。