ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

コンビニエンスストアの全国浸透と地域経済 3ンティア地域の1つ・高知県に焦点を絞り,大手コンビニ資本の進出とターゲット地域との関連性について検討したい。その際の分析視角について,あらかじめ提示しておこう。第1に,本稿では,フランチャイズ・チェーン内部の本部-オーナー関係に着目している。上記のように,コンビニは,小売業界内部での急成長ぶりや日常生活への浸透度,店舗内外で発生する広範な社会問題を背景に,各方面から多様な関心が寄せられている。とりわけ流通論・マーケティング論や経済法の分野では,コンビニの日本的特徴について研究が積み重ねられてきた他,学界にとどまらず当事者やオーナー支援組織からも,現場報告ならびに告発・提言が発せられるようになっている7。例えば,流通論・マーケティング論における主要な問題関心は,新たな小売業態としてのコンビニの成立・革新過程や競争力の源泉にあり,分析対象は急成長の鍵となる組織開発や本部-加盟店間の契約に基づくフランチャイズ・システムの効率性に絞られている8。一方,経済法での関心事項は,本部-加盟店間の非対称契約に起因するトラブルであり,加盟店保護に向けた法規制のあり方が論じられている9。いずれのアプローチも,チェーン巨大化の源泉としての本部-店舗間の社会関係に着眼している点で共通しているが,前7 安藤一平『コンビニ会計取扱説明書    コンビニ関係者必読本!    』本の泉社,2006年,古川琢也・金曜日取材班『セブン- イレブンの正体』金曜日,2008年,新藤正夫『廃業して分かったFC 契約の怖さ    ファミマ元店主の体験記    』本の泉社,2010年,三宮貞雄『コンビニ店長の残酷日記』小学館新書,2016年。加盟店支援団体によるものとして,植田忠義『「激変の時代」のコンビニフランチャイズ    オーナーたちは,今    』花伝社,2010年,同『フランチャイズは地域を元気にできるか    誰も書かなかったその役割と課題    』新日本出版社,2011年。8 コンビニの成長を裏付ける革新性を重視したものとして,矢作敏行『コンビニエンス・ストア・システムの革新性』日本経済新聞社,1994年,川辺信雄『セブン- イレブンの経営史    日本型情報企業への挑戦    』有斐閣,1994年(新版2003年),金顕哲『コンビニエンス・ストア業態の革新』有斐閣,2001年,対照的にFC システムが内包する加盟店との軋轢や高コストの廃棄ロスに着目したものとして,後藤一郎「コンビニエンス・ストア問題の帰趨」後藤一郎・神保充弘・申賢洙編『マーケティングの諸問題』同友館,2011年が挙げられる。9 代表的な研究として,以下のものがある。本間重紀編『コンビニの光と影』花伝社,1999年(新装版,2009年),本間重紀・岡田外司博・山本晃正編『コンビニ・フランチャイズはどこへ行く   「 地獄の商法」? 適正化への法規制が必要だ    』花伝社,2001年。また,コンビニ経営の批判的検討を収録したものとして,「(特集)コンビニの社会経済学」『経済』第174号,2010年も参照。